研究課題/領域番号 |
24580211
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小山 浩正 山形大学, 農学部, 教授 (10344821)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ブナ / 豊凶 / 防御 / 繁殖 / トレード・オフ |
研究概要 |
研究対象地としている山形県鶴岡市の国有林内および山形大学農学部附属演習林内のブナ二次林において、本研究の期間以前からすでに設定してある継続観察個体72個体について、引き続き平成24年度の開花量とウエツキブナハムシをはじめとする植食性昆虫による虫害被害程度を個別に観察した。平成24年度は、すべての個体において開花は観察されなかった。このため、林分全体としての作柄も凶作年となった。これは山形県全体の傾向とも一致している。一方、ウエツキブナハムシの被害は多少みられ、かつ個体による違いも観察されが、全体として前年度までの状態に比べると少なく、同種の大発生は収束に向かいつつあると推定される。このため、来年度以降の発生は少なくなることが予測される。ただし、ウエツキブナハムシ以外の植食性昆虫については、常在的被害が発生しいた。 これらの植食性昆虫に対するブナの防御機構の関係を調べるために、上記の観察個体からサンプリングをして、定期的に得られた葉について、食害形態の様子、物理的防御としてのトリコーム密度、葉脈および葉肉の堅さ、昆虫にとっての報酬ともいえる窒素含有率の季節推移を調べた。葉に対する食害は、春先と晩夏の2回のピークが認められた。初回のピークにおいて、葉のトリコームは急激に減少し、まだ葉が柔らかい時季に食害が集中していた。ただし、この時期の葉の窒素含有率は少なかった。逆に、晩夏のピークでは、窒素含有率は高いものの、葉は堅くなっていた。したがって、この時期に食害を起こしたものは、ウエツキブナハムシのような、ブナの物理的防御を突破できるスペシャリストであると考えられた。逆に、春先の食害はジェネラリストによるものと考えられた。 また、秋に枝を採取して、翌年の豊凶を予測したところ、平成25年は凶作あるいは多くて並作と予測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象として設定している72個の調査個体について、開花履歴、虫害履歴、葉の形質等について順調に調査が進められている。特に、開花履歴については、すでに10年近い開花履歴が個体ごとに記録されており、このまま継続することで、貴重なデータが整う。これに加えて、虫害の履歴についても4年間の記録が付加された。本研究の開始と同時に、これらに加えて葉の堅さやトリコームなどの防御形質と窒素含有量が加わることになり、それぞれの関係(個体による繁殖と防御の間のトレード・オフ関係)を明らかにする条件が整いつつある。来年、以降にシュートの成長量もデータに加えて、解析を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究対象として設定している72個の調査個体について、来年度も引き続き開花履歴、虫害履歴、葉の防御形質と窒素含有量について調査分析を行う。特に、葉の防御形質と窒素含有量については、平成24年度までは代表的な個体についてサンプリングをした結果であったが、平成25年には開花履歴の異なる個体を複数サンプリングすることで、繁殖と防御の間のトレード・オフ関係について明確にする予定である。さらに、シュート成長調査も加えることで、成長とのトレード・オフ関係の解析も予定している。 また、高度作業車による林冠アクセスが可能になったので、携帯型光合成測定装置の使用と組み合わせて、対象個体の光合成速度との関連も解析する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|