研究課題/領域番号 |
24580212
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上條 隆志 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10301079)
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研究分担者 |
橋本 啓史 名城大学, 農学部, 助教 (30434616)
田村 憲司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70211373)
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キーワード | 火山遷移 / 生態系改変者 / 窒素固定植物 / 土壌生成 / ミミズ / 火山島 / 安定同位体分析 / 三宅島 |
研究概要 |
中大型ミミズは、土壌生成作用を持つ生態系改変者として重要な役割を持つ.また、窒素固定植物は、生態系に窒素を付加するという点で、化学的改変者ともいえる。本研究の調査地である伊豆諸島三宅島の2000年噴火火山灰堆積地は、現在、噴火後の植生遷移が進行しており、ミミズも生息している。また、ここでは遷移初期種のハチジョウススキと窒素固定植物のオオバヤシャブシが優占している。本研究は、生態系発達における生態系改変者と窒素固定植物の相互関係とその機能を明らかにすることを目的としている。当該年度研究では、まず、これら遷移初期植物の違いがミミズの分布に与える影響を野外調査において明らかにすることを目的とした。調査地は2000年噴火直後に成立したハチジョウススキ草原、オオバヤシャブシ低木林とした。前者ではハチジョウススキ草原内にオオバヤシャブシが単木状で存在し、後者ではオオバヤシャブシ低木林内にパッチ状にハチジョウススキの優占する場所が見られる。各サイトそれぞれでハチジョウススキ樹冠下、オオバヤシャブシ樹冠下,計41地点でハンドソーティング法によりミミズを採集した。分布調査結果、ミミズの個体数は、オオバヤシャブシ低木林オオバヤシャブシ樹冠下で最も多かった.また、一般化線形モデルによる解析のからも、ミミズの分布は、オオバヤシャブシの存在に正の影響を受けることが示された。これらのことから一次遷移初期地におけるミミズの個体数は,オオバヤシャブシのような窒素固定植物の存在に強く影響されると考えられた。さらに、ミミズが土壌生成に与える影響を明らかにするため,三宅島の火山灰、リター、ミミズを用いた飼育実験を筑波大学において開始することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミミズの安定同位体分析、ミミズの空間分布調査とその解析は、順調に進行している。飼育実験については、やや遅れてはいるが、実験は開始できている。総合的にみると、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査については、ミミズ採集地における環境条件の測定を行う。特に、土壌について、重点的にサンプリングを行う。また、追加の生息状況調査を行う。分析については、土壌の物理化学性の分析の他、団粒分析、土壌微細形態の分析を行う。ミミズについては、追加の安定同位体分析を行う。 飼育実験については、飼育終了後に、同様の土壌に関する分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
三宅島現地の協力者らのご厚意により、旅費、宿泊、移動等の面で、昨年度はコストをかけず十分な現地調査を実施できたこと、安定同位体分析については今年度行わなかったこと、ならびに、土壌分析とミミズの飼育実験に必要な物品について、既存の器具を使用できたことによる。 三宅島での現地調査を当初計画より、増やし、より信頼度の高い結果とする。具体的には、ミミズの広域分布調査の他、土壌サンプリングと環境データの収集を行う。。 土壌サンプルについては、一般理化学分析の他、団粒分析、土壌微細形態の観察等を行い、ミミズが土壌に与える効果を検討する。 ミミズの飼育実験については、ミミズの嗜好性を検討できる実験系を追加する。また、すでに開始している実験系についても、飼育容器内の土壌の一般理化学分析の他、団粒分析、土壌微細形態の観察等を行う。
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