森林管理や林業の実務における衛星測位システム(GNSS)の重要性が高まる中、日本のMSAS、ロシアのGLONASSに加えて、準天頂衛星を利用した森林測量のパフォーマンスについて検証を行った。トータルステーションを使ってスギ人工林内に設定した0.24haのテストサイトにおいてマッピングレベルのTrimble Pro 6T/6HとナビゲーションレベルのeTrex 20/20J、GPSMAP 62SJという5種類のGNSSレシーバーを用いて測位試験を行った。その結果、真の面積に対するTrimble Pro 6Tによる実測値がディファレンシャル補正後に100.4%になるなどGLONASSを使ったマッピングレベルのGNSSレシーバーにより高精度な面積測量が可能であることが明らかになった。GPSMAP 62SJ(MSASなし)では実測値が真の面積に対して117.9%と大きな乖離を生じたが、GPSMAP 62SJ(MSASあり)では104.2%となりMSASに一定の補正効果が認められた。準天頂衛星にはほとんど測位誤差の改善効果が認められなかったが、これは補完信号のみしか使っていないためと考えられる。続いて、準天頂衛星の補強信号を利用可能なCD311を用いて測位試験を行った。その結果、スギ人工林のテストサイトでは準天頂衛星の補強信号を用いてもMSASを用いた場合と測位精度にはほとんど差がなかった。それでも、高仰角の準天頂衛星は中仰角のMSASと比較すると、スギ人工林内では取得率・補正率ともに高くなり、補正信号は十分に受信できていた。マルチパス耐性のあるHurricaneアンテナを使用してもスギ人工林内では測位精度の改善はわずかに止まったが、これは中低位仰角から進入する信号が大きく劣化していたからであると考えられる。マルチパス除去機能を備えたGNSSレシーバーを用いることで、スギ人工林においても測位精度が大きく改善する可能性があると考えられる。
|