研究課題/領域番号 |
24580221
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
原 忠 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (80407874)
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研究分担者 |
沼田 淳紀 飛島建設株式会社技術研究所, その他部局等, その他 (10443649)
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キーワード | 液状化 / 木材利用 / 三軸試験 / 地球温暖化対策 |
研究概要 |
本研究の目的は,南海トラフ巨大地震による被害が想定される高知県を対象に,森林資源を活用した地盤の液状化対策技術を開発するものである。平成25年度に実施した主要な研究成果は下記の4項目である。 (1)前年度に継続し,高知県における森林経営と木材生産・丸太打設液状化対策工法の適用性に関する実態調査アンケートとヒアリング調査を実施し,高知県における林業の現状と課題を分析した。さらに,高知市防災対策課,みどり課などの複数の地方自治体を対象に,提案手法の具体的な適用先についてアンケートを行い,高知県内での施工の可否を検討した。加えて,実施工を想定した具体的な提案を行い,四国県内で初めて実証実験を行う見通しが得られた。(2)実際に丸太打設による液状化対策工が実施された千葉県浦安市,及び千葉県神崎町で採取された試料を対象とした室内液状化試験を行い,丸太打設による地盤改良効果を評価した。その結果,丸太打設後の地盤は乾燥密度は大きく変動しないが,繰返し載荷回数20回で定義された液状化強度は大きく増加することが明らかになった。(3)高知県の異なる2地点(大方地区,大津地区)で不撹乱採取された砂を用いた室内液状化試験を行い,研究が遅れている海洋型地震に対する液状化抵抗性を求めた。その結果,海岸平野部の液状化強度の違いを粒度や密度,土被り圧の観点から定量的に求めることができた。(4)木材打設による液状化対策モデル地盤を対象に,コスト,炭素貯蔵量,工事によるエネルギー利用量を試算し,既往の液状化対策工法と比較した。その結果,打設後の供用・信頼性は,木材の腐朽を考慮しながら打設によるコスト,炭素貯蔵量を定量的に求めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度実施予定の4課題のすべてが順調に進捗した。特に課題(2),(3)の室内三軸試験では,地盤条件の異なる複数地点から複数個の試料を採取し,木材打設による改良効果を科学的な知見に基づき定量的に評価することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は研究の取り纏めを計画しており,研究分担者と連携を取りながら,以下の3課題に取り組む予定である。 (1)現地調査や室内試験結果,常時微動観測結果などの複数の調査で得られた知見に基づき,既存の揺れ易さハザードマップを高度化する。さらに,液状化対策工に活用可能な木材寸法や供給量を明らかにし,木材供給側の要望を反映し,大量使用が可能な液状化対策モデルのプロトタイプを,具体的な被害予測地域で構築する。 (2)平成26年度丸太打設実施予定の高知県仁井田地区より深度の異なる複数個所より不撹乱試料を採取し,丸太打設前後の地盤改良効果を,地盤の剛性,せん断強度の観点から整理する。 (3)既往工法から丸太打設による工法に転換したときの経済効果と温室効果ガス削減効果を,高知県仁井田地区での丸太打設施工例をモデルに定量的に評価し,液状化対策工として森林資源の活用するための具体的な方法を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究はそれ以前に引き続いて行っていたため、実験補助者への謝金やデータ分析に伴う人件費の使用額が予定より少なかった。また、世界木材工学会議(WCTE)への投稿ができておらずそのための論文投稿料及び旅費が未使用額として生じた。 平成26年度は、論文投稿費として100,000円,消耗品購入の物品費として三軸試験消耗品等に230,000円、旅費として400,000円、印刷費等その他として150,000円での使用を計画している。
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