研究課題/領域番号 |
24580225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
田中 和博 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70155117)
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研究分担者 |
小林 正秀 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (10468259)
長島 啓子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40582987)
美濃羽 靖 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (80285246)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 林冠ポリゴン / オルソフォト / GIS / 高解像度リモートセンシング / 単木抽出 / ナラ枯れ / カシノナガキクイムシ / 枯死木の位置把握 |
研究概要 |
人工林における単木的管理手法の構築に関する研究では、兵庫県多可郡多可町加美区清水地区にある約100年生のスギ・ヒノキ林に実証実験区を設定した。2012年9月26日に低高度から撮影した空中写真を基にオルソ化した画像を入手し、10月24~25日に毎木調査をした。オルソフォトからGISを用いて単木ごとに林冠ポリゴンを作成し、現地での毎木調査結果を属性情報として入力して、立木データベースを完成させた。予備解析として、林冠ポリゴンと胸高直径あるいは胸高断面積との関係について解析したところ、それぞれの大きさについては明瞭な相関は認められなかったものの、それぞれの大きさの順位については相関が認められた。 天然林における単木的管理手法の構築に関する研究では、2011年4月撮影のGeoEye1の画像を利用し、8つの広葉樹の反射特性を把握し、樹種判別・単木抽出手法の検討を行った。その結果、あらかじめ画像を針葉樹林・落葉広葉樹林・常緑広葉樹林に分類した上で、樹種分類を行うことで樹種判別の精度の向上がみられた。しかし単木抽出は十分な精度で行えなかったため、手法の検討が今後必要となる。 ナラ枯れ被害木の管理手法の構築に関する研究では、ヘリから撮影した写真とGoogleEarthを併用してナラ枯れ木の位置を正確に把握する手法を確立した。この手法を用いて、京都市市街地周辺の2005~2012年のナラ枯れ本数を把握した。また、枯死木の位置データとGISの空間解析機能を用いて、ナラ枯れ発生初期林の地形を解析した。その結果、低標高に分布する外来樹種などの衰弱木が被害の起点になることが明らかになった。そこで、神戸市において、被害の起点になる樹木の抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工林における単木的管理手法の構築に関する研究では、当初の予定通り、実証実験区のオルソフォトならびにDSM(数値表層モデル)を入手し、林冠ポリゴンを作成して、立木データベースを完成させることができた。予備的な解析の結果、林冠ポリゴン大きさの順位と胸高直径あるいは胸高断面積の大きさの順位との間に相関が認められたことから、この関係を単木的森林管理に応用できる可能性が示唆された。 天然林における単木的管理手法の構築に関する研究では、今年度は4月の画像による各樹種の反射スペクトルの把握と、樹種判別・単木抽出の可能性を検討し、樹種判別手法を概ね確立することができた。また、現地調査を通し巨樹の位置をGISに入力するデータベースの構築にも着手し始めており、当初の予定通りの成果を上げることができたと言える。 ナラ枯れを防除するためには,火災の消火と同様に、早期発見・早期処理が重要である。ナラ枯れ被害木の管理手法の構築に関する研究では、高解像度リモートセンシング画像からナラ枯れ木を抽出する手法は開発できていないが、ヘリから撮影した写真を用いた抽出が可能となった。また、被害の起点になる外来樹種などが存在する林分において、明るい場所に位置する大径木に粘着紙を設置してカシノナガキクイムシの飛来をモニタリングすることで、被害を早期発見する手法も開発できた。
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今後の研究の推進方策 |
人工林における単木的管理手法の構築に関する研究では、今後、単木択伐的な立木伐採について、立木配置の観点から、GISを用いて空間解析を行い、人工林における単木的管理手法を森林計画の観点から構築するとともに、それらを体系化する。また、単木的管理手法は林冠ポリゴンが比較的容易に作成できる高齢林に適した管理手法であるので、幼齢林から、若齢林、壮齢林、そして、高齢林、老齢林と続く流れの中で、森林管理手法の連続性についても体系的に構築する必要がある。 天然林における単木的管理手法の構築に関する研究では、今後は、5月のシイ開花時期、7~8月の夏のあるいは、10~11月の紅葉の時期の画像を探し、適切な画像が有る場合をその画像を購入・解析し、昨年度の4月の画像の結果と相補的に利用することで、樹種判別・単木抽出の精度をあげる。適切な画像が入手できるまでは、これまでに入手済みの画像を利用し、解析に取り組む。 ナラ枯れ被害木の管理手法の構築に関する研究では、リモートセンシングによるナラ枯れ木抽出の試みに関するの研究内容をまとめた。今のところ現場で使われている方法はないが、解像度は向上しており、そうした高解像度の画像を用いることで、ナラ枯れ木が抽出できないかを検討する。ナラ枯れと気象との関係を解析した結果、春の長雨が被害を助長している可能性が示唆された。こうした気象条件で樹木が衰弱するかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が56,108円あるが、これは予備解析の遅れから学会発表を見送った分の旅費であり、この分は学会発表の旅費として使用する。
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