研究課題/領域番号 |
24580225
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
田中 和博 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70155117)
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研究分担者 |
小林 正秀 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (10468259)
長島 啓子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40582987)
美濃羽 靖 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (80285246)
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キーワード | 林冠ポリゴン / オルソフォト / GIS / 高解像度リモートセンシング / 単木抽出 / ナラ枯れ / カシノナガキクイムシ / 枯死木 |
研究概要 |
人工林における単木的管理手法の構築に関する研究では、兵庫県多可郡多可町加美区清水地区のスギ・ヒノキ林に設定した実証実験区を用いて引き続き調査研究を実施した。前年度の研究では林冠ポリゴンと胸高直径との間に明瞭な関係が認められなかったため、今年度は樹高についても、毎木調査を10月30~31日、11月12~13日に実施し、樹高を基準にした単木的管理手法について研究した。さらには、3月26日には樹幹解析用に1本伐倒し円板を持ち帰った。このデータは、次年度の成長解析に用いる。 天然林における単木的管理手法の構築に関する研究では、高解像度衛星画像を用いて、京都三山で見られるコナラ、シイ、ソヨゴ、アベマキ、カシ、クスノキ、モミジ、サクラ、マツ、スギ、ヒノキの11樹種の単木抽出と判読を試みた。春季撮影のGeoEye-1画像及び夏季撮影のWorldView-2画像を用いて最尤法分類による分類を行ったところ、モミジの分類精度が前者で80%、後者で85%、シイの分類精度が前者で63%、後者で86%と比較的高い確率で判別できた。また,GeoEye-1画像で林相区分を行った上で樹種判別を行ったところ,いずれの樹種においても精度の向上が見られた。 ナラ枯れ被害木の管理手法の構築に関する研究では、ヘリから撮影した写真を基に、GISソフト(Arc View)とGoogleEarthを用いてナラ枯れ木を把握する手法を確立し、京都市市街地周辺の2005~2013年のナラ枯れ本数を集計した。このデータを基に、ナラ枯れが最初に発生しやすい場所の条件を解析した結果、低標高に分布する外来樹種などの衰弱木が被害の起点になることを解明した。また、舞鶴市の被害データも加えて、気象がナラ枯れに与える影響を解析した結果、厳冬期の高温、春期の雨量増大、梅雨期の最低気温の上昇がナラ枯れを助長することを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工林における単木的管理手法の構築に関する研究では、兵庫県多可郡多可町加美区清水地区のスギ・ヒノキ林に設定した実証実験区の全立木についてデータベースを作成しているが、今年度の調査研究により樹高のデータを追加することができた。林冠ポリゴン、樹高、局所的な本数密度などと胸高直径との関係について、解析中である。 天然林における単木的管理手法の構築に関する研究では、2時期のリモートセンシングデータを用いた教師木反復追加法を考案し、その応用可能性について検討している。これは、高解像度衛星画像の教師木による単木抽出を行い、得られた結果を現場で検証し、樹種が確定できた樹木をさらに教師木としていくことで、分類精度の向上を図っていくものである。現段階でモミジやシイは高い精度で分類できているが、その他の樹種についてはより精度を向上させていく必要があるといえる。 ナラ枯れ被害木の管理手法の構築に関する研究では、ナラ枯れ被害木を初期段階で発見することが重要である。高解像度衛星写真を用いてナラ枯れ木を抽出する手法は開発できていないが,ヘリから撮影した写真を用いた抽出が可能となった。また,被害の起点になりやすい地形条件や,被害が発生しやすい気象条件の解明は,被害の早期発見に貢献できる研究成果となった。さらに,粘着紙やカシナガトラップを用いたカシノナガキクイムシのモニタリングなど,被害を早期に発見する手法も開発した。
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今後の研究の推進方策 |
人工林における単木的管理手法の構築に関する研究では、平成24年度、25年度の研究で整備した胸高直径、樹高、樹冠幅、立木配置といった立木データベースに加え、立木直接販売の実績データを用いることにより、体系的な人工林の単木的管理手法について森林計画の観点から解析する。また、年輪解析情報および毎木調査データを用いて、成長予測シミュレーションを行う。 天然林における単木的管理手法の構築に関する研究では、教師木反復追加法の応用可能性についてさらに調査研究を進めるとともに、立地類型区分の考え方も導入することにより、単木抽出技法の精度向上を目指す。また、画分類の手法も、画像解析に採用するバンドの抽出法を検討するとともに、単バンドで樹種分類をし、それらの結果を重ねることで、より確実に樹種分類が行えないか、検討する。 ナラ枯れ被害木の管理手法の構築に関する研究では、高解像度の衛星写真を用いることで、ナラ枯れ木が抽出できないかをさらに検討する。厳冬期の高温、春期の雨量増大、梅雨期の最低気温の上昇がナラ枯れを助長するメカニズムについて検討する。カシナガトラップの性能を評価し、他の昆虫にも利用できないかを検討する。
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