研究課題/領域番号 |
24580230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
飛田 博順 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (10353781)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フランキア / 御嶽山 / 自然安定同位体比 / 標高 / ミヤマハンノキ / ヤハズハンノキ / ケヤマハンノキ |
研究概要 |
ハンノキ属樹種は放線菌のフランキアと根で共生し大気中の窒素を利用する窒素固定能力を持つ。この課題では、木曽御嶽山の泥流跡地に更新したハンノキ属数樹種について、窒素固定能力の樹種間の違い、同一樹種内の立地間の違いを明らかにすることを目的とする。 木曽御嶽山において1984年に発生した泥流跡地に設定されている固定調査プロット、標高2000 mの高標高区と標高1100 mの低標高区、を調査地とした。高標高区では、攪乱時に表土が残った場所(高標高区)と表土が残らなかった場所(高標高-表土なし区)の2カ所を対象とした。対象調査区において、ハンノキ属樹種と窒素固定能を持たない樹種(コントロール樹種)が同所的に生育している場所を数地点選定した。葉の成熟後の8月に、ハンノキ属樹種とコントロール樹種の樹冠葉を採取し、乾燥・粉砕後、窒素安定同位体比を測定した。 葉の窒素安定同位体比は、ハンノキ属樹種の値(4樹種:-2.40から-0.47)とコントロール樹種の値(10数種:-6.42から-2.11)の差が、各調査区で明瞭に見られたことから、本調査地の窒素固定の寄与率の評価にこの手法を適応できることが確認できた。今回の評価では、植生の回復が早い低標高区では(ケヤマハンノキ:寄与率43.8から56.8%)、高標高区(ミヤマハンノキ:63.1から86.7%;ヤハズハンノキ:60.6から71.9%)に比べて窒素固定の寄与率が低いことが示唆された。低標高区のほうが植生回復に伴う土壌形成が進んでいるためと推定される。高標高区の表土の有無では、表土なし区のほうが窒素固定の寄与率が高い傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画である、1)御嶽山泥流跡地における調査地点を選定すること、2)夏に葉をサンプリングし、安定同位体比を分析し、ハンノキ属樹種の窒素固定の寄与率の評価を試みること、を予定通り達成した。その結果、本調査地で安定同位体比を用いた手法の有効性が示された。これらから、現在までの達成度を(2)おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基に選抜した調査地点で、成長期間を通じて葉をサンプリングし、現有の質量分析器を用いて窒素安定同位体比の分析を行う。ハンノキ属樹種とコントロール樹種の結果から、ハンノキ属樹種の窒素吸収量に対する窒素固定の寄与率をより詳細に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に繰り越す17487円を加えた研究費を使用する。旅費では、調査地までの4回の出張旅費と成果発表の出張費で62万円使用する予定である。人件費・謝金では本年度同様3ヶ月分の実験補助で27万円使用予定である。物品費ではガス類や薬品類の消耗品で26万円を予定している。その他で、5万円と繰越金を合わせた額を使用予定である。
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