木質バイオマス資源作物としてエゾノキヌヤナギとオノエヤナギが着目され、試験栽培が行われてきた。この試験により、1年で6.5~13.2ton/ha(乾燥重量)の高いバイオマス収量が得られることがわかってきた。しかし、これらヤナギの高いバイオマス収量や樹種・クローン間差をもたらす要因が明かにされていない。本研究では、生理生態学的側面からヤナギの種特性を評価することを目的とし、成果は、その能力を維持増進させるための栽培管理や植栽管理や栽培場所選定に利活用する。 北海道下川町に挿し穂で増殖したオノエヤナギ6クローン、エゾノキヌヤナギ10クローンを用いた。光合成特性(ガス交換特性)を明らかにするために携帯型光合成蒸散測定装置を用いて切り枝法により葉内CO2濃度と光合成速度の関係の測定を行った。また、測定した葉は、実験室に持ち帰り、窒素濃度の分析、形態観察を行った。比較として、同所的に成育する落葉広葉樹シラカンバ、ミズナラも同様の測定を行った。 両ヤナギ樹種とも、枝の伸びは、1日あたり平均1.3~3.0cm、葉の数は、平均1.1~1.5枚と大きな成長を示した。両ヤナギの純光合成速度、蒸散速度は、(シラカンバとミズナラと比べて)高かった。両ヤナギの葉内CO2濃度と純光合成速度の関係は、初期勾配(Vcmax)が急で、少しの気孔開度の増加で光合成を速くできることがわかった。葉の窒素濃度とVcmaxの関係は正の相関関係がみられた。窒素濃度は、シラカンバ、ミズナラの場合2~3%と普通の樹木葉で見られる値であったが、ヤナギの値は、3~5%と高い値を示した。 結論として、ヤナギの旺盛な成長は、葉に多くの窒素を分配し高い光合成能を持つことが起因していることがわかった。速い光合成速度と速い蒸散速度の発揮させるためには、窒素肥料を与え、湿潤な土地への挿しつけが高い収量を得るために重要であることがわかった。
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