研究課題/領域番号 |
24580233
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
稲垣 昌宏 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (00343781)
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キーワード | リン可給性 / 火山噴出物 / 季節変化 / イオン交換膜 / 表層土壌 |
研究概要 |
土壌中の可給態のリンは火山灰質の土壌では遊離酸化鉄やアルミニウムと結合するため、植物にとって吸収、利用しづらい形態となっている。森林土壌のリンの可給性に関する知見は少なく、火山灰質土壌とそれ以外の土壌でリンの存在形態が異なっているかどうかは明らかにされていない。また、これまで季節性等に関する知見の多い可給態窒素とリンとを比較した研究例もほとんどない。 火山灰混入度合いの異なる試験地間で可給態養分量の違いをあきらかにするために、イオン交換膜法を用いて吸着される養分量の通年測定を行なった。硝酸態窒素量は火山灰の影響の少ない鹿北より菊池試験地の方がほぼ通年に渡って大きかった。年初から7月ごろまでは吸着される硝酸態窒素量はほぼ横ばいであったが、9月になると両試験地とも急激に窒素量が大きくなり、その後減少する傾向にあった。これは、火山灰質土壌の微生物活性がより高く、窒素の無機化が促進されるためであると考えられた。このことは前年度測定した酸性フォスファターゼ活性の結果とも一致した。また、樹木の生育期間中は養分吸収により土壌中の窒素量が低くおさえられ、高温によって生育が休止すると吸収されない分の窒素が土壌に残存するためと考えられた。この結果は、関東地方の褐色森林土壌における土壌中の硝酸態窒素濃度の季節変化の結果とも一致していた。一方、可給態リン量については、鹿北試験地で16反復中1、2点の検出があるのみで、他サンプル及び菊池試験地サンプルでは検出されなかった。季節的な違いは確認できなかった。火山灰の影響の少ないと考えられる鹿北試験地においても、鉄やアルミの酸化物のようなリンと結合体をつくる基質があり、リンは水溶性の形態では存在しにくいことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に設定した火山噴出物の影響の異なる2つの試験地で可給態養分の通年測定を行なった。初年度に手法を確立したイオン交換膜法を用いて、約1ヶ月半ごとに継続的な現地測定を行なうことができた。硝酸態窒素に関しては既存の研究例と同様の季節変化を検出することができたが、可給態リンに関しては、予想に反して火山噴出物の影響の少ない鹿北試験地においてもほとんどのサンプルが検出限界以下という結果となった。仮説とは結果が異なったが本年度予定していた通年での可給態養分の測定結果が得られたことから、研究計画は概ね計画通り進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
風乾土壌中のリン量をさまざまな抽出液を用いて分析する。これまでの測定結果を取りまとめ、火山噴出物の影響の異なる2試験地の特性を整理し、残された問題点を検討する。得られた知見を、国内外で学会発表を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末(3月中旬)に海外において開催された国際学会に出張した。所属研究所では年度末出張は概算額が支払われ、出張後に精算額が調整される。航空機の遅延等不測の事態による精算額の調整に対応するため一定額を確保しておいたが、結果的に調整が不要であったため繰越額が生じた。 H26年度は当初の計画通り、実験に用いる消耗品類、調査及び学会参加のための旅費、実験補助員の人件費、英文校閲や学会大会参加費等に使用する。
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