ハラアカコブカミキリはシイタケ栽培用のホダ木の害虫であり、日本本土への侵入種でもある。本研究では、ハラアカコブカミキリ幼虫(卵から成虫の羽化まで)の発育零点(温度別飼育試験から算出される発育できない温度の目安)及び有効積算温量(ある発育ステージを終えるまでに必要な発育零点以上の温度の積算量)などの発育の特性を明らかにすることを目的としている。越冬の終えたハラアカコブカミキリ成虫を採集してクヌギの枯れ枝を与えて飼育して産卵させ、産卵されてから1日以内の卵を枯れ枝から取り出して供試した。卵はシャーレに入れた湿ったろ紙の上に置いて孵化させた。孵化した幼虫は成虫の羽化まで人工飼料を用いて飼育した。人工飼料の組成は、クヌギ材粉砕物25%、蚕用粉末人工飼料20%、粉末乾燥酵母5%、蒸留水50%ととした。よく混合した人工試料20gを容量100mlの三角フラスコに入れてヘラで固めた後、シリコセンで蓋をして高温高圧殺菌(121℃、20分)した。このように作製した人工飼料に孵化1日以内の幼虫を1頭接種した。卵、幼虫及び蛹の飼育温度は、15℃から30℃まで2.5℃段階にした。幼虫を低温(15℃から20℃)で飼育した場合、発育期間にばらつきが大きく発育期間の逆数を利用する従来法では発育零点は計算できなかった。そこで、低温部のデータを有効に使える池本・高井法を用いて計算した。17.5℃では飼育中の幼虫もあり、暫定的な結果ではあるが、卵、幼虫、蛹のおよその発育零点と有効積算温量は、それぞれ、11.5℃と110日℃、13.5℃と710日℃、10.0℃と185日℃であった。卵は全ての飼育温度で高率に孵化した。一方、幼虫と蛹では、高率に蛹化、羽化する温度は、それぞれ、20℃から30℃、20℃から27.5℃であり、蛹化や羽化の適温は幼虫や蛹の発育適温と異なる可能性があることが示唆された。
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