Pichia細胞へホヤのセルロース合成遺伝子であるCiCesA-His遺伝子を組み込み、メタノール誘導によりCiCesAタンパク質を細胞内に発現させた。引き続き、Pichia細胞をザイモリアーゼ酵素で処理しスフェロプラスト化し低張液処理により細胞を破壊し、細胞膜分画を回収した。得られた分画をジギトニンで処理し、標的タンパク質を可溶化、その遠心分離上清を回収した。引き続き、CiCesA-Hisタンパク質の可溶化時のジギトニン濃度を検討しながら、NiカラムによるCiCesA-Hisタンパク質の部分精製を試みた。ジギトニン濃度0.5-1.0%では、CiCesA-Hisタンパク質の部分精製が可能であることがわかった。この溶出液を使用してセルロース合成反応を行った。合成反応液として、基質のUDPグルコース、2価カチオンとしてCaとMg、セロビオースを含み、それぞれの添加濃度を変化させた反応系を準備し、30°Cで一昼夜の反応を行った。その結果、反応液が若干白濁する反応条件が見出された。合成反応物をネガティブ染色法により電子顕微鏡観察すると、不定形もしくは乱れた微細な繊維構造が観察された。結晶構造を明らかにするため、微小部電子回折法による構造解析を試みたが、明確な結晶性の電子回折像は確認できなかった。実験系を大きくして、X線回折による詳細な結晶解析を行える系を構築する必要があることがわかった。
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