研究課題/領域番号 |
24580242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 功二 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00293910)
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研究分担者 |
宇京 斉一郎 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, その他 (70455260)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱処理木材 / 破壊靱性値 / 吸着特性 |
研究概要 |
1.高温セット乾燥が破壊靱性値や準脆性破壊挙動に与える影響を調べるため、くさび型割裂試験とCT試験による検討を行った。実験の内容と得られた結果は以下のようになった。 (1)木材の準脆性破壊挙動を捉えるために「くさび型割裂試験体」を用いてスプルース材の割裂破壊挙動の観察を行ない、デジタル画像相関法(DIC)によってき裂先端のひずみ分布を得た。また、き裂先端の応力分布を得るために、有限要素法解析(FEM)による弾性解析を行なった。これらの結果を対照することにより、き裂先端の伸長量を明らかにした。しかしFPZ領域の評価は難しく、さらなる検討が必要とされた。 (2)熱処理を施したスギ生材を用いた実験ではJ積分を利用した非線形破壊力学的手法で破壊挙動を評価した。V.C. Li et al. (1987)や三橋ら(1990)らが行った手法に準じてCT試験(TLシステム)を行い、荷重点開口変位(CMOD)とき裂先端開口変位(CTOD)を測定、J積分値の限界値(Jc)と割裂引張強度を得た。実験の結果、処理温度の上昇に伴い、割裂引張強度は減少した。しかしJc値はばらつきが大きく、処理温度に関する傾向が確認できなかった。 2.官能基の変化と破壊過程に関係については、SENB試験で評価した。スプルース気乾材を120~200℃の温度で1時間熱処理し、破壊エネルギーを評価した。同時に吸着水の等温線を作成し繊維飽和点を求め、さらに吸着定数や吸着サイト数を評価した。実験の結果、破壊エネルギーは150℃を境に減少し、重量減少率や繊維飽和点の傾向と類似した。また最大荷重は接線方向に荷重をかけるLTシステムでは130℃から減少が始まり、吸着定数の傾向に類似した。吸着サイト数は180℃から急激に減少し、他とは異なる挙動を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画として次の3つを上げた。(1)くさび型割裂試験から真の応力-ひずみ曲線、(2)蒸煮処理によるねばり低下の評価、(3)吸着特性と破壊の関係である。3番目の吸着特性の関係については、順調に研究が進められた。近々、学術雑誌に投稿予定である。2番目の蒸煮処理に影響について、くさび型試験ではなくJ積分を応用した方法の導入によりかなり進展があったと考えられるが、木取りの影響という新たな問題が確認された。新たな問題点の確認ともに解決も容易だと思われ、予定した手法とは異なっているが順調に進展していると判断できる。現在、研究成果の投稿準備に移った。1番目の真の応力-ひずみ曲線の件については、FEM解析で当初予想しなかった問題点が確認され、解析は予定通りには進まなかった。解析方法について次年度の課題とした。総合的に判断して、当研究は計画に比べてやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は次の3点について研究を進める 1.準脆性破壊挙動のひずみ解析とFEM解析によるFPZ領域の検証:前年度で汎用FEM解析ソフトウエアでの非線形挙動の解析の問題点を認識した。そこでFEM解析は線形挙動解析とし、DIC解析で得られたひずみ分布を比較して降伏点の評価を試みる。また、同様の手法を比較的実験結果が安定しているSENB試験に導入し、真のひずみ-応力曲線を得る手法を確立する。また実大材の乾燥試験を行い、それらの有効性を検証する。 3.高温熱処理材の破壊挙動の解析:180℃を超える熱処理材(たとえばサーモウッド)では、曲げ強度はわずかに低下するが、割裂強度は3~4割低下するとされる。このような脆性的な材料では、準脆性的な破壊挙動の観察は難しいと考えられる。同様に高温熱処理材では、クリープ変形や応力緩和性能が影響すると予想されるが、知見はあまり多くない。割裂強度の評価と共に、クリープ変形や応力緩和性能を評価し、処理温度の関係を明確にする。 3.官能基との変化との関係:熱処理材を用いてIR計測を行い、官能基の変化を評価する。前年度の吸着等温線からの結果と合わせて官能基の影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度は解析方法の検討の遅れから、調湿用システムの購入を見送った。今年度は繰り越された研究費で次年度研究に必要と考えられるハイスピードカメラの購入を検討する。 設備備品費(1000千円):ハイスピードカメラ2台(Lumenera社 Lt425, @380千円×2)、制御用ソフトウエア(180千円)、制御用コンピュータ(DELL製) 消耗品(280千円):実大乾燥試験用試験体(スギ製材品) 旅費(487千円):研究打ち合わせ(2名×2回)、実験調査旅費(2名×2回) その他(100千円):英文校正、論文投稿費用
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