研究課題/領域番号 |
24580242
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 功二 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00293910)
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研究分担者 |
宇京 斉一郎 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (70455260)
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キーワード | 準脆性破壊挙動 / くさび型割裂試験 / SENB試験 / CT試験 / 湿潤木材 / 高温熱処理 / サーモウッド / 応力緩和 |
研究概要 |
1.準脆性破壊挙動の観察に適した試験方法を検討するため以下の解析を行った。 (1)くさび型割裂試験の実施とSENB試験による準脆性破壊挙動の導出:引張試験では得にくかった大きなひずみを、き裂がゆっくり進展くさび型割裂試験では得ることができた。引張試験に比べて、準脆性破壊挙動をしめすひずみ軟化領域を持つ応力-ひずみの関係を得ることが容易であると思われる。しかし、くさび型割列試験では初期の応力分布の設定に、SENB試験では中立軸のばらつきに問題点を確認した。 2.高温熱処理が破壊靱性値や準脆性破壊挙動に与える影響を評価するため以下の検討を行った。 (1)湿潤材の熱処理による破壊挙動の変化:CT試験により、湿潤スギ試験体の破壊エネルギーの年輪傾斜角依存性を考察した結果、破断面の凹凸を関係することが確認された。また、熱処理によって傾向に変化は見られなかった。 (2)高温熱処理(サーモウッド)の破壊靱性値および緩和性能の評価:処理温度220度と237度のサーモウッド処理を行ったスギ材の破壊靱性値を調べた結果、臨界応力拡大係数は処理温度とともに低下した。また臨界開口変位は、処理温度220度と237度ではあまり差が見られなかった。いずれにしてもサーモウッド処理では破壊靱性値はほぼ半減した。また準脆性破壊挙動の要因の一つと思われる緩和性能をKWW関数を用いて解析した。処理温度にともない特性緩和時間は大きく増加し、拡張指数パラメータは減少した。平均的な緩和時間は長くなるが、緩和機構の多様性を示す緩和時間の分布は広がることがわかった。特に、特性緩和時間からはサーモウッド処理により、き裂先端に生じる大きな応力は緩和されにくくなることが変わった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度以降の計画として「準脆性破壊挙動の観察に適した実験方法の検討」と「高温熱処理が破壊靱性値や準脆性破壊挙動に与える影響」を挙げていた。前者では、これまで引張試験で行っていた方法をくさび型割裂試験やSENB試験に応用した。その際に、初期応力分布を仮定する必要があるが、モーメントの平衡関係から初期分布を設定することで解決でした。この方法が得られたことで当初の目標か達成できたと考えられる。また、後者の課題ではサーモウッド処理の影響を検討し、破壊靱性値の低下を確認できた。さらに、2つのパラメータで緩和挙動を表現できるKWW関数を適用することで、サーモウッド処理が緩和挙動に与える影響を簡潔に評価できた。この結果により、研究計画はほぼ順調に達成されていると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、前年度にわかった問題点の解決と、残された課題に取り組む。まず、「準脆性破壊挙動の観察に適した実験方法の検討」として、くさび型割裂試験の初期応力の設定方法を工夫する。前年度はひずみ分布の測定結果から圧縮ひずみと引張ひずみの分布を評価して回転中心を推定することに失敗した。回転中心の設定方法の検討を行う。また、当初の予定通り破壊靱性値や準脆性挙動に与える因子の検討を行う。組織構造学的には破断面の電子顕微鏡観察による破壊位置の特定、熱力学的には化学成分の組成変化と緩和挙動の関係を明確にすることを目標とする。なお、可能であれば針葉樹材と広葉樹材の比較から組織構造との関係も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入予定だった装置(恒温恒湿槽)が実験の手順の前後により、次年度に繰り越して予定を立てた。しかし、該当年度の実験では準備する必要がなかった。 最終年度では、当初に予定していなかった国際学会での発表を予定している。
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