• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

セルロースを出発原料とする白金代替燃料電池用ウッドカーボンカソード触媒の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24580244
研究種目

基盤研究(C)

研究機関京都大学

研究代表者

畑 俊充  京都大学, 生存圏研究所, 講師 (10243099)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード固体高分子形燃料電池 / セルロース / Py-GC-MS / メラミン / レボグルコサン
研究概要

低炭素社会実現のため新エネルギー開発に関する研究は重要性を増しており、CO2の排出を大きく低減できる燃料電池が注目される。この中でも固体高分子形燃料電池(PEFC)は小型化・低温作動が可能で、自動車、家庭用電源、モバイル機器用に利用できる。PEFCの普及のために白金の代わりに窒素を炭素電極にドープする試みが行われその実用化が急がれる。
木質バイオマスの50%程度を占める主成分であるセルロースは難黒鉛化材料と知られている。炭化セルロースはエッジを多く含み活性点が多く結合が起こりやすいが一方、結晶化が起こりにくい。セルロースの誘導体化と触媒炭素化により、導電性と高い酸素還元活性をあわせもつ白金代替燃料電池用カソード触媒(WFC)合成を試みた。燃料電池用触媒の合成最適条件を求めるため、熱分解によるガスクロマトグラフ質量分析(Py-GC/MS)と透過電子顕微鏡観察により、WFC開発のための基礎データを得た。
炭素化前駆体にはFeまたはCoを担持したアセトアセチル化セルロース(CAA)にメラミンを75wt%混合した混合物を用いた。炭素化条件は窒素雰囲気下で、温度:600-800℃、昇温速度:20℃/分の条件で通電加熱を行った。
Py-GC-MS分析で調べたところ、セルロースからレボグルコサンが生成したが、CAAまたはメラミン混入によりレボグルコサンの生成を抑えることができた。800℃で炭素化したFeCAA800では黒鉛微結晶が観察されたが、700℃で炭素化したFeCAA700では黒鉛微結晶は観察されなかった。800℃から炭素の結晶化が起こったこと、またFeが炭素結晶の微細組織に影響を与えていることがわかった点が意義深い。Py-GC-MSとTEM-EELS による分析手法により、木質を前躯体に用いた窒素含有炭素の反応機構を部分理解につながった点が重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に示した平成24年度の研究項目「ウッドカーボンアロイ触媒の合成」の目標を達成したため。
直パルス通電加熱法により、キレート化によりCo, Fe 等の微小金属を均一分散させたセルロースとメラミンの混合粉末にセルロースとメラミン粉体のみから窒素含有ウッドカーボンアロイ触媒を合成した。CoまたはFeの金属イオンとセルロースのケトン基とのキレート化により木質粉末中に微小金属を均一分散化させた。メラミンを混入した木質バイオマス粉末に急速触媒炭素化を施し、ウッドカーボンアロイカソード触媒を合成した。木質炭素化物とメラミン粉体は、重量比を変化させることが容易で、大量の窒素添加したサンプルをも作成することができた。一個一個の金属原子を含むキレートがセルロース中で高分散し、結晶化を均一に起こすことができたため、上記の達成度「(2)おおむね順調に進展している」とした。

今後の研究の推進方策

今年度は「酸素還元活性発現および劣化メカニズムの解明」を研究課題にあげ、以下の研究を推進する。
メラミンや金属触媒の濃度や焼結条件(金属重量濃度、メラミン重量濃度、加熱速度、焼結時間、焼結時の圧力、および焼結温度)を変化させてウッドカーボンアロイカソード触媒(WFC)を合成し、WFCの製造条件が物性に与える影響を検討する。酸素還元反応(ORR)活性測定により電気化学的評価を行い、X 線光電子分光分析(XPS)、窒素吸着法、小角X 線散乱(SAXS)、分析電子顕微鏡(FETEM-EELS、SEM-EDS)による炭素構造の評価により、WFC のORR 活性発現および劣化メカ
ニズムを解明する。

次年度の研究費の使用計画

上記にあげた酸素還元反応(ORR)活性測定により電気化学的評価を行うため、下記のシステムを購入する予定である。昨年度は、装置の購入準備に十分な時間をかけることができなかったため、やむを得ず購入を延期した。本研究でも使用する透過電子顕微鏡の移設計画を、所属部署の都合で実施する準備に追われ研究に十分な時間を割くことができなかったためである。今年度初めより、下記の装置購入を準備している。
電気化学測定システム(約600千円)
((株)イーシーフロンティア製, 型番ECstat-100) 一式
(内訳) ポテンショスタットアナライザー、オプションソフト、電気化学標準ソフト、スタンダード分析セル、グラッシーカーボンディスク作用電極、溜め込み式可

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ウッドバイオリファイナリー2.スギ炭素化物からの機能性材料の開発2012

    • 著者名/発表者名
      畑 俊充
    • 雑誌名

      材料

      巻: 61(8) ページ: 742-747

    • 査読あり
  • [学会発表] セルロースとメラミンを原料とした窒素含有炭素化物の構造解析2013

    • 著者名/発表者名
      畑 俊充、朝倉 良平、内本 喜晴、Roland Benoit、Sylvie Bonnamy、Paul Bronsveld
    • 学会等名
      第63回日本木材学会大会
    • 発表場所
      岩手県、盛岡市
    • 年月日
      20130327-20130329
  • [学会発表] セルロースとメラミンを原料とした窒素含有炭素化物の合成2012

    • 著者名/発表者名
      畑, 朝倉, 内本, R. Benoit, S. Bonnamy, P. Bronsveld
    • 学会等名
      第39回炭素材料学会年会
    • 発表場所
      長野県、長野市
    • 年月日
      20121128-20121130
  • [学会発表] ヒドロキシエチルセルロース由来微粒子状炭素の調製2012

    • 著者名/発表者名
      島田 武, 木島正志, 畑 俊充
    • 学会等名
      第39回炭素材料学会年会
    • 発表場所
      長野県、長野市
    • 年月日
      20121128-20121130
  • [学会発表] Synthesis and characterization of carbonized cellulose for eco fuel cells2012

    • 著者名/発表者名
      T. Hata, R. Asakura, Y. Uchimoto., R. Benoit, S. Bonnamy, P. Bronsveld
    • 学会等名
      Ecowood 2012
    • 発表場所
      Porto, Portogal
    • 年月日
      20120905-20120907
  • [学会発表] 原子状酸素照射による木質炭素化物1Si焼結体表面における構造変化の解明2012

    • 著者名/発表者名
      梶本武志, 畑俊充, 小嶋浩嗣, 田川雅人, 早川基
    • 学会等名
      第10回木質炭化学会発表会
    • 発表場所
      岩手県、盛岡市
    • 年月日
      20120628-20120629
  • [学会発表] 木質熱処理物の化学構造および金属イオン処理における錯体の形成2012

    • 著者名/発表者名
      本間千晶, 畑俊充
    • 学会等名
      第10回木質炭化学会発表会
    • 発表場所
      岩手県、盛岡市
    • 年月日
      20120628-20120629
  • [学会発表] 木質からの白金代替燃料電池用カソード触媒合成条件のPy-GC∠MSによる最適化2012

    • 著者名/発表者名
      畑俊充, 朝倉良平, 内本喜晴, 本間千晶
    • 学会等名
      第10回木質炭化学会発表会
    • 発表場所
      岩手県、盛岡市
    • 年月日
      20120628-20120629
  • [学会発表] Activation of Carbonized Cellulose for Improvement of Oxygen Reduction Reaction Activity of Catalytic Cathode in Fuel Cells2012

    • 著者名/発表者名
      T. Hata, R. Asakura, Y. Uchimoto., R. Benoit, S. Bonnamy, P. Bronsveld
    • 学会等名
      Carbon2012
    • 発表場所
      Krakow, Poland
    • 年月日
      20120617-20120622
  • [学会発表] Characterization of carbonized cellulose as catalytic cathode in fuel cells2012

    • 著者名/発表者名
      T.Hata, R.Asakura, Y.Uchimoto, R.Benoit, S.Bonnamy, P.Bronsveld
    • 学会等名
      Order/Disorder in Bulk Carbon Materials: Structure/texture,quantification,imaging,modeling,structure--‐propertyrelationships
    • 発表場所
      Krakow, Poland
    • 年月日
      20120615-20120616
  • [図書] Resistance of Silicon-Containing Carbonized Lignin to Atomic Oxygen Erosion. Protection of Materials and Structures From the Space Environment; Jacob Kleiman, et al2013

    • 著者名/発表者名
      T.Kajimoto, T.Hata, M.Tagawa, H.Kojima, and H.Hayakawa
    • 総ページ数
      617
    • 出版者
      Springer
  • [図書] 2-3-B08 炭, 持続型生存基盤論ハンドブック第6巻2012

    • 著者名/発表者名
      畑 俊充
    • 総ページ数
      534
    • 出版者
      京都大学学術出版会
  • [備考] ミッション研究室

    • URL

      http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/L/hata/naiyo.html

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi