研究課題/領域番号 |
24580244
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
畑 俊充 京都大学, 生存圏研究所, 講師 (10243099)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 窒素 / 細孔構造 / 木質炭素化物 |
研究概要 |
低炭素社会実現のため新エネルギー開発に関する研究は重要性を増しており、二酸化炭素の排出を大きく低減できる燃料電池が注目されている。この中でも固体高分子形燃料電池(PEFC)は小型化・低温作動が可能で、自動車、家庭用電源、モバイル機器用として期待されている。しかし、白金は希少金属のひとつで高価で、PEFCを搭載する燃料電池車が普及すればするほどコスト高となり、燃料電池車の普及の妨げとなっている。 上記の問題解決のためにヘテロ元素のひとつである窒素をドープした炭素電極を開発する試みを行った。そして、窒素をドープして得られる機能性炭素材料の酸素還元活性の機構解明を検討した。窒素には電子吸引性があり、隣に結合している炭素元素から電子を吸引することによる酸素還元活性に注目した。窒素雰囲気下での炭素化反応による木質の高機能化において細孔構造は重要な働きにも着目した。代表者らは、窒素をドーピングしたセルロース炭素化物からの燃料電池カソード触媒の開発を行い、合成条件の検討と構造解析をこれまで行ってきたが、窒素をドープして得られる機能性炭素材料は酸素還元性は、白金を代替カソード触媒開発につながる。未利用のバイオマスからの燃料電池用触媒の開発によって、持続可能な社会の実現につながることが将来予想される。 本年度は非白金系窒素ドープ燃料電池用触媒の合成条件の最適化のために、さまざまな条件で調整したサンプルの窒素吸着法による分析を行った。分析の結果、窒素が共存した雰囲気下で加熱して得られた木質炭素化物は、特徴的な空隙構造を持っており、この空隙構造が酸素還元活性に影響を与えることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において記した平成25年度の研究項目は「活性発現および劣化メカニズムの解明」である。直パルス通電加熱法により、キレート化によりCo, Fe 等の微小金属を均一分散させたセルロースとメラミンの混合粉末にセルロースとメラミン粉体のみから窒素含有ウッドカーボンアロイ触媒を合成し、ウッドカーボンアロイカソード触媒(WFC)のメラミンや金属触媒の濃度や焼結条件(金属重量濃度、メラミン重量濃度、加熱速度、焼結時間、焼結時の圧力、焼結温度等)といった合成条件が物性に与える影響を検討した。合成したWFCの酸素還元反応(ORR)活性を測定することにより、電気化学的特性を評価するとともに、窒素吸着法と分析電子顕微鏡(FETEM-EELS)による炭素構造の評価を行った。その結果、サンプルの細孔構造が大きく変化することが電気化学的特性に影響を与えることがわかった分かった。更に、本年度は非白金系窒素ドープ燃料電池用触媒の合成条件の最適化のために、さまざまな条件で調整したサンプルの窒素吸着法による分析を行った。 窒素が共存した雰囲気下で加熱して得られた木質炭素化物について、上述のように、特徴的な空隙構造を持つことが分かり、その構造が活性発現のメカニズムに影響を与えているという知見が得られたので、上記の達成度を「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は「多変量解析による分析結果の評価と触媒開発へのフィードバック」を研究課題にあげ、以下の研究を推進する。 安価で大量のカーボンアロイ触媒を開発するために、単に三配位の窒素を増やすというだけの目標では最終ゴールまでなかなか行き着かないということが昨年度までの研究から明らかとなった。一方、WFCの物性・合成因子は数多くあり、何がどれだけ活性発現に寄与しているか複雑でわからないというのも事実である。いろいろな因子が相互に関連していてベストの合成条件を設定することが困難なためである。そこで、多変量解析の重回帰分析を導入し触媒のどの物性がORR活性に大きく寄与しているのか検討しながら、合成条件の最適化を今後行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、本予算で購入予定であった研究用消耗品を別の予算で購入したため、当該助成金が生じたことによる。 サンプルの酸素還元活性を測定するために必要な薬剤費に充てる予定である。
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