合板,中密度繊維板および紙のような木質系材料の力学特性は,木材素材の力学特性評価法に基づいた方法で評価されることが多かった。しかし,これらの木質系材料はしばしば不均質であるため,均質な直交異方性材料を前提とした木材素材の評価法がそのまま適用できない。こうした考え方にしたがって,本年度も木質系材料の力学特性評価法の検討ならびに木材素材についても新たな評価法の提案を試み,十分な成果を得ることができた。具体的な成果を以下に示す。 (1) 3点曲げおよび非対称4点曲げによる合板の層間せん断強さの評価法について検討し,適切な試験条件を提案した。 (2) 中密度繊維板については片側切欠き曲げ試験法によって適切に破壊じん性値を求めることができることを示した。また,ねじり振動およびたわみ振動試験を混合させることにより,試験体形状に依存して精度よく測定できなかった面内せん断弾性係数の正確な測定法を提案した。 (3) 非対称4点曲げ試験による紙のせん断強さの測定法を提案した。また,紙の非線形領域における応力-ひずみ関係が数理塑性理論にしたがって記述できることを示した。 (4) 木材素材を圧縮試験した際の横方向のひずみ挙動を数理塑性理論に基づいて解析した。また,振動試験でヤング率およびせん断弾性係数を測定する際,太った試験体を使用すると振動理論から逸脱し,精度よく測定できないことを示した。さらにき裂進展抵抗曲線(R曲線)の測定範囲を広くするために,端部切欠きばりの偏心3点曲げ試験(3EENF試験)を新たに提案した。
|