研究課題/領域番号 |
24580247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
市浦 英明 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (30448394)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機能紙 / 界面重合反応 / ファイバー |
研究概要 |
水溶性モノマーとしてエチレンジアミン(EDA)、油溶性モノマーとして二塩化テレフタロイル(TC)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いて、紙表面上で界面重合反応を行った。ポリアミド膜(PA)およびポリウレア膜(PU)の生成をFT-IRの分析で確認した。 25% EDAおよび1% TC、有機溶媒として、ヘキサデカン、ヘプタン、ヘキサン、ヘプタンおよび2-オクタノールを用いた。ヘキサデカン、ヘプタンおよびヘキサンを用いた場合、カプセル状のPAが生成した。この場合の拡張係数はヘキサデカンが-0.6、ヘプタンが8.5、ヘキサンが10.3であった。2-オクタノールを用いた場合にはフィルム状のPAが確認され、この場合の拡張係数は32.2であった。四塩化炭素を用いた場合、多孔状の構造が確認され、この場合の拡張係数は4.8であった。このことから、拡張係数で明確にカプセル状、フィルム状と区別できなかった。拡張係数だけでなく、他の因子も影響していると考えられる。 25% EDAおよび1% HDI、有機溶媒として前述の溶媒に加えて、シクロヘキサンを用いた。有機溶媒にシクロヘキサン、ヘキサデカン、ヘキサンおよびヘプタンを用いた場合にファイバー状のPUが確認された。特に有機溶媒として、ヘキサン、ヘキサデカンおよびシクロヘキサンを用いた場合にナノファイバー生成率が高かった。これはシクロヘキサン、ヘキサデカンおよびヘキサンの水に対する溶解度が比較的低く、有機溶媒から水相への分配もしくは水相から有機溶媒への分配が少なかったことが要因であると考えられる。一方、水への溶解度が高い四塩化炭素および2-オクタノールでは、フィルム状のPUであった。このことから、有機溶媒の水への溶解度がファイバー生成の有無、ファイバー状PUのファイバー径等に深く関わっていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、紙を水溶性モノマーに含浸後、再度油溶性モノマーに含浸処理を行うことにより、紙表面上で界面重合反応が生じ、紙表面上でナノファイバーの合成を試みている。このように紙表面上でナノファイバーが生成する考えられる因子が、紙表面上に形成されたナノ界面領域に存在していると推測される。具体的には、水と有機溶媒の液/液界面張力、紙の微細な凹凸などの表面構造因子などの化学的および物理的因子などが考えられる。その因子である①モノマー濃度、②モノマーの種類、③有機溶媒の種類、④基材について検討を行う予定である。今年度は、主に油溶性モノマーおよび有機溶媒が紙表面上で生成する高分子膜の形態に及ぼす影響について検討した。その結果、油溶性モノマーの種類を変化させただけで、高分子の形態がカプセル状からファイバー状へ変化することが明らかとなった。また、有機溶媒の種類も高分子膜の形状に影響を及ぼすことが分かった。有機溶媒の種類は、拡張係数および水への溶解度と関係があり、それらの因子が高分子膜の形態に影響を及ぼしていると推測された。 今年度は考えられる因子の中で、最も影響が大きいと考えられるモノマーの種類および有機溶媒の種類について検討を行い、成果を得ることができた。このことから、ナノファイバー合成条件についての知見を得ることができたことから、概ね今年度の目標を達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、残りの因子である基材の影響について検討を行う。また、有機溶媒の種類についても検討を加える。さらに、モノマー濃度についても研究を進め、総合的にナノファイバー生成条件についての因子を明らかにする。また、機能性についての研究も進め、高分子膜の形状と機能、特に吸着機能について検討を進める予定である。そして、機能性と形状についての知見を得ることで、実用化への展開を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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