本年度は、ナノファイバー状高分子の機能性についての研究を進め、特にアセトアルデヒドの吸着機能について検討した。その結果、シクロヘキサンおよびシクロヘキサン-クロロホルム混合液を用いて調製したカプセル構造とファイバー構造のポリアクリルアミド(PA)複合シートでは、ブランクシートと比較して高い吸着性能を示した。また、カプセル状PA膜では、カプセル径の増加に伴い、吸着性能が高くなる傾向が得られた。ファイバー状PA膜では、ファイバー生成率の増加とファイバー径の減少に伴い吸着性能が高くなる傾向であった。なお、今回の調製条件では、EDA濃度50%、有機溶媒にシクロヘキサン:クロロホルム=3:1混合液を用いた場合のナノファイバー状PA膜が最も優れたアセトアルデヒド吸着性能を示した。 また、調製したPA膜への酸化チタン光触媒の定着法についても検討した。酸化チタン(TiO2)を使用し、調製したPA膜への担持手法の確立を試みた。調製したPA膜表面に残存する未反応の酸クロリドとシランカップリング剤である3-アミノプロピルトリメトキシシランのアミンがアミド結合を介して結合させた。その後、PA複合シート表面に負のゼータ電位を与えるテトラエトキシシラン加水分解重合物(ポリシロキサン)をプライマー兼バリアー層として修飾し、正のゼータ電位を有する光触媒微粒子を静電的にシート表面に結合させた。その結果、PA-TiO2複合シートでは良好な光触媒活性を示した。シート表面へのTiO2微粒子が効果的に定着できたことにより、良好な光触媒活性が得られたと推測される。この結果、静電効果を利用した複合化方法によって光触媒紙の調製が可能であった。 界面重合法を用いた機能紙創製技術は、バインダーレスでの機能材料の複合化ができるだけでなく、その形態的特徴を活かした応用や高分子膜の表面修飾による高度機能化が可能であった。
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