研究課題/領域番号 |
24580249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
雉子谷 佳男 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10295199)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジベレリン / オーキシン / 晩材形成 |
研究概要 |
この研究では,晩材形成へのジベレリンの働きを明らかにするために,晩材形成の異なる(特徴のある)針葉樹について,晩材形成と内生ジベレリン量との関係を探ることを目的とした。 平成24年度は,試験木設定と試料採取をおこなった。晩材形成の異なる樹種として,(1)スラッシュパイン,スギおよびヒノキを選び,各樹種4本で合計12本から約2ヶ月おきに合計5回,胸高部から形成層を含む試料を採取した。つぎに,(2) 容積密度数が異なるスギ品種として,クモトオシとオビアカを選び,各品種11本で合計22本の試験木から4月,6月,9月および11月の合計4回,胸高部から形成層を含む試料を採取した。最後に,(3) 植栽密度の異なるスギ品種(トサアカ)(4823本/ha,3349本/ha,1615本/ha,1122本/haおよび541本/ha)について,各密度区分3本で合計15本の試験木から6月,8月,11月および12月の合計4回,胸高部から形成層を含む試料を採取した。すべて,形成層への針刺をおこない,試料は-80度のフリーザーで保存した。 平成24年度の分析実験は,予備実験の結果からGA1とGA4に着目し,重水素で標識したGA1とGA4を用いて定量のための検量線を作成した。つぎに,(2) 容積密度数が異なるスギ品種(クモトオシとオビアカ)について,形成層に含まれるIAA,GA1およびGA4量の季節変動を明らかにした。4月にIAA量が多い試験木では,細胞分裂が活発で放射径の大きな仮道管の分化が認められ,4月のIAA量と早材形成との関連性が推測された。他の試験木よりも晩材率が極めて大きかったクモトオシ試験木では,GA4量が6月から11月にかけて増加し,晩材形成促進との関係性が推測された。この成果は,針葉樹の晩材形成促進にジベレリン量が関わっていることを示す重要な研究成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の課題である試験木の設定および試料採取をすべておこなうことができた。また,晩材形成時期に細胞分裂頻度が高く,晩材率が極めて高いクモトオシ試験木で,細胞分裂と対応するようなGA4量の季節変動を確認することができた。これらの結果から,上記の評価と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,ジベレリンと晩材形成との関連性を示す成果が得られた。したがって,今後の研究の方向としては,申請時の研究計画どおり進める。樹種や生育条件が異なる試験木について,ジベレリンと晩材形成との関係についてデータを蓄積し,針葉樹の晩材形成促進物質としてジベレリンの働きが重要であることの信頼性を高める。また,晩材形成が活発な試験木では,GA4が検出されたものの,晩材幅が狭い試験木では,GA4のピークが確認できなかった。今後,より低レベルのジベレリンを検出できるように,精製方法および定量方法(新規導入LC/MS(Q-Exactive, Thermo Fisher Scientific))を改良する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,IAAおよびジベレリンの定量分析に必要な各種薬品,内部標準,固相抽出および分析機器使用料に研究費を使用する。また,形成層を観察するための切片作成に必要なダイアモンドナイフにも研究費を使用する。研究成果の公開のために,学会への参加,投稿論文の投稿料および英文校正にも研究費を使用する。
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