研究課題/領域番号 |
24580249
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
雉子谷 佳男 宮崎大学, 農学部, 准教授 (10295199)
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キーワード | ジベレリン / 晩材形成 / オーキシン / 木部形成 |
研究概要 |
今年度は,晩材形成とジベレリン量との関係を探るために,2つの実験をおこない以下の結果を得た。 まず,植栽密度が異なるスギ品種(トサアカ)について,木部形成の季節経過を調べるとともに,IAA量およびGA4量の季節変動を調べた。植栽密度が小さい林木ほど,直径と樹冠長が大きかった。植栽密度の木部形成への影響は早材形成で顕著であり,植栽密度が小さい林木ほど早材形成が旺盛であった。晩材形成への植栽密度の影響は小さかった。樹冠長が大きく,枝下高が低いほど,樹幹形成層のIAA量は多かった。形成層に含まれるIAA量と6月までに形成された木部細胞数とには高い正の相関関係が認められた。季節が経過するにつれてIAA量の影響は小さくなった。イオンサイクロトロン型質量分析計(Q-FTMS)でのGA4定量方法を確立し,すべてのサンプルについて含有量が極めて少ないGA4の定量に成功した。GA4量と晩材形成中の細胞分裂頻度との関係は認められなかった。今回の試験木は,早材形成に違いがみられる林木であったため,GA4量の影響が小さかったと推察した。 つぎに,樹種特性として晩材率が小さなスギおよびヒノキと晩材率が大きなスラッシュパインについて,IAA量およびGA4量の季節変動を明らかにした。その結果,IAA量のピークはスギとスラッシュパインで同じ(4月)であったものの,GA4量のピークはスギで5月,スラッシュパインで7月であり,大きな違いが認められた。スラッシュパインは晩材形成が旺盛な樹種であり,夏以降(晩材形成時期)に細胞分裂のピークがあることを既に報告している。GA4量と晩材形成の因果関係が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であった3つの実験,すなわちスギ品種,植栽密度の異なるスギ,針葉樹3樹種(スギ,ヒノキおよびスラッシュパイン)についてのIAA量およびGA4量の定量を終えることができた。また,当初の計画では,トリプル四重極(LC/MS/MS)でのGA4量の定量を考えていたが,含有量が少なく,定量できないサンプルが多かった。イオンサイクロトロン型質量分析計(Q-FTMS)での分析方法を確立し,微量なGA4でも高感度で定量できるようになった。植物ホルモン定量林木の木部形成について,解析が終わっていないものの,本研究で最も重要な定量分析を終えることができたため,現在までの達成度として「おおむね順調に進展している」との評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の植物ホルモン定量結果から,今後も晩材形成の要因物質として,GA4に着目する方向で研究を進めることとした。とくに,樹種特性として晩材形成が旺盛であるスラッシュパインについて,他の樹種とは異なり,遅い時期にGA4のピークが認められた。スラッシュパインの木部形成の解析を進め,GA4量と細胞分裂および分化についてGA4の役割を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予算では,分析機器使用料を多く計上していた。大学に新規導入された分析装置の使用料について,今年度の使用料を徴収しないとの大学側からの提案あり,分析機器使用料が余ることとなった。そのため,次年度使用額が139814円となった。 今年度は,分析装置使用料が徴収される。トリプル四重極(LC/MS/MS)で既に定量したサンプルについて,より高精度のイオンサイクロトロン質量分析計(Q-FTMS)で再度定量するほうが望ましい。これらの再測定に,次年度使用額を使用する予定である。
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