今年度は,晩材形成とジベレリン量との関係を探るために,2つの実験をおこない以下の結果を得た。 まず,植栽密度が異なるスギ品種(トサアカ)について,仮道管の断面形状および細胞壁率とIAA量およびGA4量との関係を調べた。6月から8月に形成された木部の細胞壁率は,植栽密度区分間で有意差が認められた。しかし,8月から10月に形成された木部の細胞壁率では,植栽密度区分間で有意差は認められなかった。6月から8月において,植栽密度区分間で有意差が認められた原因は,晩材形成開始時期の違いによると考えられた。IAA量およびGA4量と細胞壁率および仮道管断面形状との有意な関係は認められなかった。 つぎに,樹種特性として晩材率が小さなスギおよびヒノキと晩材率が大きなスラッシュパインについて,木部形成の季節経過を明らかにし,IAA量およびGA4量の季節変動との因果関係を調べた。すべての樹種で7月に晩材形成の開始が認められ晩材形成開始時期に違いがなかったものの,その後の細胞分裂頻度には大きな違いが認められた。スギおよびヒノキでは7月以降の細胞分裂頻度が著しくて以下するものの,スラッシュパインでは9月から11月で活発な細胞分裂が認められ,11月以降でも活発に細胞分裂していた。スラッシュパインのIAA量はスギおよびヒノキに比べて有意に大きく,旺盛な晩材形成がおこなわれた9月および11月のIAA量は,顕著に増大した。前年度の結果から,GA4量はIAA量に比べ遅い時期にピークがあり,晩材形成開始との因果関係を推測した。しかし,今年度の結果から,スラッシュパインの旺盛な晩材形成を説明できるGA4量の変動は認められず,IAA量で認められた。
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