• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

木材腐朽菌によるリグナン類の代謝に基づくグメリナ材の耐腐朽性発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24580252
研究機関独立行政法人森林総合研究所

研究代表者

河村 文郎  独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (80353655)

キーワードグメリナ材 / 木材腐朽菌 / カワラタケ / 抗菌活性発現機構 / リグナン類 / グメリノール
研究概要

昨年度は、スモールスケールでグメリナ (Gmelina arborea) 心材の主要な抗菌活性リグナンであるグメリノールのカワラタケ(Trametes versicolor)による代謝の条件を確立した。当年度は、代謝生成物の収率が高くなる条件を用いて液体培養のスケールアップを行い、代謝生成物を大量に生成し、機器分析並びに抗菌アッセイに必要な量の確保を試みた。培養後の液体培地から含有成分を回収、濃縮乾固し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、3種の代謝物が大量に生成していた。これらの代謝生成物を分取HPLCを用いて単離し、機器分析によって構造決定した。その結果、代謝生成物はグメリノールのベンジル位に1~2個のメトキシル基が導入された化合物であり、これらは新規リグナン類であることが判明した。木材腐朽菌によるリグナン類のベンジル位メトキシル化という変換反応についてはこれまで報告例がないことから木材腐朽菌における新しい知見となった。単離された3種の代謝生成物の基質に対する収率は39.3%, 14.5%, 5.2%であった。ハロー法を一部改変した手法によって代謝生成物のカワラタケを用いた抗菌アッセイを行ったところ、最も高収率で得られた代謝生成物は基質(グメリノール)よりも高い抗菌活性を示した。一方、その他の2種の代謝生成物の活性は、基質よりも低くなり、特に2カ所にメトキシル基が導入された生成物では、抗菌活性は著しく低下していた。このことから一般的な菌体は基質の弱毒化を図ると考えられるが、カワラタケによるグメリノールの代謝では、通常とは異なる代謝系が働き、抗菌活性の高い代謝物の生成による耐腐朽性発現を示唆する結果となった。グメリノールはグメリナ心材に大量に存在するため、抗菌活性の高い代謝生成物が効率よく生成することによって抗菌活性発現に大きく寄与するものと推察した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

グメリナ心材の抗菌活性発現機構の解明において最も重要であると考えられる代謝生成物の情報について3種の化合物を単離同定し、カワラタケに対する抗菌活性を明らかにすることに成功した。

今後の研究の推進方策

カワラタケによるグメリノールの代謝生成物について当年度に得た3種の化合物以外の生成物の単離構造決定を試みる。カワラタケがグメリノールを代謝する際に、基質よりも抗菌活性の高い代謝生成物を生成してしまうという一般的な生物としては矛盾した現象は、温帯産の木材腐朽菌に熱帯産樹木の成分を作用させたことが原因の一つであると考えている。熱帯産の木材腐朽菌ではこの現象が抑制される可能性があるので、熱帯産の木材腐朽菌、Pycnoporus sanguineus等を用いてグメリナ心材に含有されるリグナン類を代謝させ、代謝生成物を分析し、カワラタケによる代謝の結果と比較する。また、これまで基質のリグナン類としては心材中での含有率の高いグメリノールのみを使用してきたが、当年度はより抗菌活性の強いパウロウニンを用いた実験も行い、グメリナ材の耐腐朽性発現機構解明のためのデータを補強する。

次年度の研究費の使用計画

購入予定であった分取液体クロマトグラフィー用カラムは、既に所有しているカラムの性能が充分維持されていたため、購入を次年度に延期することとした。
分取液体クロマトグラフィー用カラム、種々の分析用試薬類及び培養用消耗品にかなりの予算を使用する予定である。さらに、国際学会等での発表に必要な参加登録費及び旅費、論文投稿料及び英文校閲等への支出を予定している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] カワラタケによるグメリナ(Gmelina arborea)材抗菌成分の代謝2014

    • 著者名/発表者名
      河村文郎、大原誠資
    • 学会等名
      日本木材学会
    • 発表場所
      愛媛大学(愛媛県)
    • 年月日
      20140313-20140315

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi