研究実績の概要 |
前年度までにグメリナ心材中での含有率が最も高い(+)-gmelinolをカワラタケによって代謝させ、ベンジル位(7'-位)にメトキシル基が導入された(+)-7'-methoxygmelinol及び2種のリグナン類を代謝産物として単離、構造決定した。当年度は、(+)-gmelinolに構造が類似した(+)-paulowninを基質として用いて同様に代謝実験を行い、結果を比較した。なお、(+)-paulowninはグメリナ心材から単離した成分の中で最も高い抗菌活性を示したリグナンであり、側鎖部分の平面構造が(+)-gmelinolと同一である。(+)-paulowninを液体培地中でカワラタケによって代謝させ、代謝生成物のピークを高速液体クロマトグラフィーによって確認した。最も生成量の多かった代謝産物を単離し、核磁気共鳴分光法や質量分析によって分析した結果、基質の7'-位にメトキシル基が導入された(+)-7'-methoxypaulowninと構造決定した。この代謝産物への水酸基の導入位置は(+)-gmelinolの代謝実験において最大の収率で得られた(+)-7'-methoxygmelinolと同様であった。また、微量な代謝産物については、機器分析の結果、7-位及び7'-位に2個のメトキシル基が導入された7,7'-dimethoxypaulowninの生成が示唆された。しかしながら本代謝産物については充分な量を単離することができず、完全な構造決定については今後の課題である。グメリナ心材中には(+)-gmelinolと(+)-paulowninが共存しており、カワラタケにおけるフロフラン型リグナンの7'-位水酸化酵素の基質特異性は構造の類似した両リグナンを判別するほどには高くなく、いずれも7'-位がメトキシル化されると考察した。
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