研究課題
基盤研究(C)
魚類の成長にはインスリン様成長因子-I(IGF-I)が重要であるが、その活性はIGF結合蛋白(IGFBP)により促進または阻害されると考えられる。サケ科魚類の血中には3種類の主要なIGFBPが存在し、申請者らはこれらがIGFBP-1a、 -1bおよび-2bであることを明らかにした。本研究は、これらIGFBPの組換え蛋白を作製し、機能を解析することを目的としている。本年度は、IGFBP-1aと-1bについて大腸菌にて組換え蛋白を作製した。サクラマスの肝臓からIGFBP-1aと-1bの翻訳領域cDNAをクローニングした。そして、蛋白の可溶性を高めるチオレドキシン(trx)を融合パートナーとして発現するpET32aに組み込み、発現ベクターを構築した。これを蛋白質の正しい立体構造の再生が効率的に行われる大腸菌Rosettagamiに形質転換した。培養後、IPTG(isopropyl-b-thiogalactoside)により組換え蛋白の発現を誘導した。結果、電気泳動において予想されるサイズに組換え融合蛋白バンドが観察され、それらがリガンドブロッティングにおいてIGF-I結合能を持つことが確認された。さらに大量培養においても可溶性画分に発現が見られた。組換え融合IGFBP-1b(trx.IGFBP-1b)に関しては、さらに可溶性画分をニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。そして、融合パートナー(trx)をエンテロキナーゼにより切断した。制限消化後のIGFBP-1bは、標識IGF-Iを用いたリガンドブロッティングにおいて血清IGFBP-1bと同一の位置に検出され、活性だけでなく構造的にも正常な組換え蛋白であると考えられた。これらのことから、本発現系により機能的な組換えIGFBPが作製できることが示された。
2: おおむね順調に進展している
計画にほぼ沿った研究結果が得られたため。
今後は、サクラマスの脳下垂体細胞培養系の確立を研究協力者と共に試みる。また、脳下垂体におけるIGF-IとIGFBPの作用の標的となる成長ホルモン(GH)を定量するため、時間分解蛍光免疫測定法およびリアルタイム定量PCR法を確立する。こららを用いて、IGFBPのIGF-I調節機能を解析する予定である。
次年度の研究費は、脳下垂体培養系、時間分解蛍光免疫測定法およびリアルタイム定量PCRに必要な試薬や器具類に主に使用する。また、研究協力者と共同実験を行うための旅費および成果発表旅費も計上する予定である。
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Comparative Biochemistry and Physiology, Part A
巻: 165A ページ: 191-198
10.1016/j.cbpa2013.02.029
http://www.geocities.jp/fishvitellogenin/ms/Welcome.html