研究課題
魚類の成長にはインスリン様成長因子(IGF)-Iが重要である。IGF-Iは骨や筋肉といった標的器官に作用して成長を促進するだけでなく、脳下垂体において成長ホルモン(GH)の合成と分泌を抑制する。一方で、このようなIGF-Iの活性は複数存在するIGF結合蛋白(IGFBP)により調節されている。本研究は、組換えIGFBPを作製し、サクラマスの脳下垂体におけるIGF-Iの作用が、IGFBPによりどのように調節されているのかを解析することを目的としている。本年度は、組換えIGFBPを大量発現させ、機能的なIGFBP-1aと-1bを調製し、初代脳下垂体細胞培養系に添加して作用を調べた。これまで確立した大腸菌を用いた組換え蛋白発現系でIGFBP-1aと-1bを発現させた。大量発現させると、可溶性画分で検出されていた組換え蛋白が不溶性画分に移った。そのため、不溶性画分を尿素で可溶化した後に蛋白の巻き戻しを行った。次にニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、mgオーダーの組換え蛋白を得た。これらはIGF-I結合能を持つことが確認された。さらに、融合蛋白を酵素にて切断した。結果、目的のサイズにバンドが検出され、血中のものとほぼ同様の組換え蛋白が調製できた。次に、融合組換えIGFBP-1aと-1bを、サクラマス初代脳下垂体細胞培養系にIGF-Iと共に添加した。まず、IGF-Iは添加量(1, 10もしくは100 nM)依存的にGHの分泌を抑制した。そして、組換えIGFBP-1aと-1bは共にIGF-Iの抑制作用を増強させた。これまでIGFBP-1はIGF-I作用の阻害型と考えられていたが、本研究の結果から状況によっては促進型にもなりうることが示唆された。以上、本研究により組換えIGFBPが大量に作製され、魚類の脳下垂体において初めてIGFBPの作用の解析が行われた。
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Comparative Biochemistry and Physiology Part A
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