研究課題
(1)東北地方広瀬川のサクラマスは、従来知られているよりも半年早い、0歳魚の秋に降海し、東北沿岸で回遊して翌年の春に広瀬川に回帰することが示唆された。一方、広瀬川にはこうして海から遡上する個体の他、春に小型(体長27cm程度)の1歳半の魚が見つかる。そこで5月に中流域で採集した5個体に電波発信機(Lotek nano tag)を装着し、その後の行動を定期的に調査した。結果、5個体のうち3個体は放流地点から河川を遡上し、9月に本川の産卵場に到達したことから、秋に銀化魚様稚魚となって降河行動を行った0歳魚の一部は、河川残留型に分化して、回帰魚と同様、翌春に河川内を遡上し産卵することが示唆された。(2)水産庁増養殖研究所においてスチールヘッドトラウト銀化魚をモデルとして降海機構を検討した。実験河川にスチールヘッドトラウトを収容し、カオリンによる人工濁りによって降河行動を誘起し、これらの行動とホルモン、体サイズとの関係を解析したところ、降河行動を起こしたスチールヘッドトラウトは、既に実験の1ヶ月前から甲状腺ホルモンやコルチゾルの濃度が高いこと、また降河個体は眼径の比率が大きいことが明らかとなった。(3)オレゴン州立大学において、マスノスケをモデルとして降海機構を検討した。まずふ化稚魚を円筒形の水槽で飼育し、上層、下層に分布した稚魚をさらに別々の水槽に収容して飼育を続けた。その後、0歳の秋にこれらの稚魚を海流水槽に7尾ずつ収容し、冷却した飼育水を導水して回流行動を観察したところ、上層魚は、下層魚よりもより活発に水槽内を降下することが判明した。これらの結果は、降河回遊行動の若齢下には、孵化後以降の成長プロファイルやそれに伴う生理的・形態的変化が深く関係していることを示す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Journal of Fish Biology
巻: 85 ページ: 1253-1262
10.1111/jfb.12510
Journal of Fish Biology. 2014, 85, 1263-1278. doi:10.1111/jfb.12521.
巻: 85 ページ: 1263-1278
10.1111/jfb.12521