研究課題/領域番号 |
24580258
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岩滝 光儀 山形大学, 理学部, 准教授 (50423645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有害藻類 / 渦鞭毛藻 / 微細構造 |
研究概要 |
本研究は,分子系統解析により系統的位置が特定されていない無殻渦鞭毛藻について細胞内微細構造を解析・比較することで系統的位置を特定することを目的としている。鞭毛装置構造の解析には細胞サイズの比較的小さな種の培養株を作成する必要があり,また,分子系統解析と走査電顕観察を行った上で,系統的位置が特定される種,されない種を識別して優先的に解析を進める種を特定する必要がある。今年度は鶴岡など日本沿岸域の他にマレーシアなど東南アジア各国などから試料を入手し,30種以上の単藻培養株を作成した。LSU rDNAに基づく分子系統解析を行い,入手した小型種には狭義のGymnodinium系統群に含まれる種のほか,特定の系統群との類縁が見られず系統的位置が不明な種,そしてWoloszynskia類が含まれることを確認した。狭義のGymnodinium系統群に含まれる種はBarrufeta sp.やG. dorsalisulcumなど,系統的位置が不明な無殻種は,A. sanguinea,C. polykrikoides,C. fulvescensなどについて培養株を作成した。走査電顕観察からは,Woloszynskia類は上錐溝の形状からスエシア科に所属することが確認された。これらは日本沿岸域からは初報告となり,2種は系統と形態から未記載種であることが確認された。さらに,系統的位置が不明な無殻種として,稀報である緑色葉緑体を保持する渦鞭毛藻の培養株作成にも成功したが,これらは2形態型に識別され,既報の緑色渦鞭毛藻Lepidodiniumとは類縁が見られなかった。入手した培養株のうち未記載種であることが判明したWoloszynskia類2種と系統的位置が不明な緑色渦鞭毛藻2種について透過電顕観察を開始し,核や葉緑体の膜構造,ピレノイド基質などの形質について比較を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は試料採集と単藻培養株作成を行うことで30種以上の海産無殻種と類縁種の培養株を入手することができた。これらを維持培養することで,細胞内微細構造に基づく系統比較が行えるようになっただけでなく,LSU rDNA解析を並行して進めた結果,Gymnodinium系統群など渦鞭毛藻綱内で既知の系統群に含まれる種と,類縁種が不明な種を特定した。これらの作業により,細胞内微細構造比較に用いる種と培養株を決定した。比較対象の選定に加え,走査電顕観察も行うことで種の記載報告に必要な細胞外微細構造の情報を併せて取得している。今年度の成果の中で,無殻種と細胞外形が酷似するWoloszynskia類の数種について日本沿岸域から初発見されたこと,これらのうち2形態型が未記載種であることを確認したこと,小型無各種のうち緑色葉緑体をもつ2株はLepidodiniumと系統的類縁がないことを確認したこと,については研究開始当初に想定した以上の成果である。これらの培養株を用いて透過電顕観察に着手し,核や葉緑体の膜構造,ピレノイド基質などの細胞内構造が保存されることが確認できたことは予定していた成果である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は試料採集と単藻培養株作成により多くの解析試料を入手できており,これらの作業による系統的位置の不明な種の探索は継続する。系統的位置が不明であることが確認された種,特に狭義のGymnodinium系統群やGyrodinium系統群との類縁が見られない種の走査電顕観察も継続し,外部形態が特定されたものについて優先的に透過電顕を用いた細胞内微細構造の観察を行う。小型緑色渦鞭毛藻など,細胞内微細構造の解析を進めている種について鞭毛装置構造の解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は備品購入の計画はない。培養株作成,走査電顕観察,透過電顕観察,分子系統解析は現有する備品を用いて進め,これらに関連する保存容器類や薬品類など消耗品の購入が研究費の主な使用予定となる。旅費は試料採集と学会での成果発表を予定している。
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