研究課題/領域番号 |
24580258
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岩滝 光儀 山形大学, 理学部, 准教授 (50423645)
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キーワード | 有害藻類 / 渦鞭毛藻 / 微細構造 |
研究概要 |
本研究は,分子系統解析により系統的位置が特定されていない無殻渦鞭毛藻について細胞内微細構造を解析・比較することで系統的位置を特定することを目的としている。初年度は30種以上の単藻培養株を作成しており,これらには狭義のGymnodinium系統群に含まれる種,特定の系統群との類縁が見られず系統的位置が不明な種,そしてWoloszynskia類が含まれることを確認している。昨年度も日本沿岸域の他に連携プロジェクトでの試料採集を活用することでマレーシアとフィリピン産試料を入手したほか,直前の3月にベトナムで採集した試料についても培養株を作成した。光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡観察,そしてLSU rDNAに基づく分子系統解析を行った結果からは,日本と東南アジア沿岸域に出現する小型渦鞭毛藻類には,多くのWoloszynskia類とされる種が含まれ,特にスエシア科に類縁があることが分かった。これらの小型渦鞭毛藻類は光学顕微鏡下で鎧板が観察されないため無殻渦鞭毛藻とも同定されてきたと考えられるが,上錐溝の構造など走査電顕観察により無殻種と識別された。未記載種であることを前年度に確認した日本海沿岸産株については,系統解析に加え透過型電子顕微鏡を用いた微細構造観察を行い,眼点の微細構造を示すことでスエシア科のBiecheleria brevisulcataとして新種記載報告した。この論文では,太平洋沿岸に出現したBiecheleriopsis adriaticaについても日本沿岸から初めて報告した。今年度に入手した試料では,ベトナム産の2株に特異な形態形質が観察され,系統解析からは類縁がある既記載種がないことを確認しているため,今後微細構造の観察を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に試料採集と単藻培養株作成により多くの解析試料を入手できており,これらの作業から狭義のGymnodiniumとは系統が異なる無殻渦鞭毛藻類似種の形態的特徴をつかむことができた。昨年度は試料採集を継続することで同様の種,特に渦鞭毛藻スエシア科構成種の培養株を順調に確立した。光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いた形態観察を行った上で系統解析を行うことにより,系統的に特異な種の把握も順調に進めている。特にこれらの種を対象に透過型電子顕微鏡観察を行うことで,系統的に特徴のある構造を認識することができるため,今後も系統的位置の不明な種の探索は継続する。日本産の未記載種についても昨年度に記載報告を行うことができた。今後も,同様に現在までに未記載種であることを把握している培養株を対象に透過電顕観察を行い,記載報告する。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの2年間で行ってきた試料採集と単藻培養株作成により多くの解析試料が入手できており,これらの作業による系統的位置の不明な種の探索は継続する。系統的位置が不明であることが確認された種,特に狭義のGymnodinium系統群やGyrodinium系統群との類縁が見られない種の走査電顕観察を継続し,外部形態が特定されたものについて優先的に透過電顕を用いた細胞内微細構造の観察を行う。現在までに最も成果が上がっているスエシア科の海産小型渦鞭毛藻を主な対象として,系統解析の他,細胞内微細構造を試みる。
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