研究課題
分子系統解析により系統的位置が特定されていない無殻渦鞭毛藻について細胞内微細構造を解析・比較することで系統的位置を特定することを目的としている。系統的位置が不明である無殻渦鞭毛藻Cochlodinium polykrikoidesとAkashiwo sanguineaは狭義のGymnodinium系統群構成種と異なり,大型で長いventral connectiveを鞭毛装置構造の一部として持つことから系統的類縁を想定したが,同様の構造がデンマークの海外研究協力者により無殻種Levanderina fissaから見つかった。これら3種は分子系統解析からは明瞭な類縁は示されないが,細胞内微細構造の一部からは系統的に近縁であることが示された。さらに,C. polykrikoidesより報告した鞭毛装置を取り巻く微小管より細い繊維から構成される構造fibrous layer structureについても,A. sanguineaの試料から観察され,さらにL. fissaからも見つかった。狭義のGymnodinium系統群に含まれない無殻渦鞭毛藻類の培養株を作成し,鞭毛装置構造の解析を進めた。前年度にベトナム沿岸より採集し,系統的位置から未記載種であることを確認しているwoloszynskia類1株の細胞内微細構造,特に鞭毛装置構造の解析を進めた。本種は大きなペダンクルを上錐中に持つが,これを裏打ちする特異な微小管束を確認した。さらに本種からは,現在までに報告のない側毛を持つトリコシストが観察されている。これらの構造は,類縁のあるスエシア科渦鞭毛藻からは観察されないため,本種が特異的に獲得した形態形質である可能性が高い。また,緑色葉緑体をもつ無殻渦鞭毛藻2株についても鞭毛装置構造の解析を進めたが,狭義のGymnodinium系統群と異なる構造は現在までのところ見つかっていない。
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日本プランクトン学会報
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