近年、問題となっているヒラメの筋肉寄生Kudoa septempunctataによる食中毒と同様、他のクドアについてもヒトへの毒性が疑われている。本研究では、天然海産魚(キチヌ、スズキ、クロダイなど)に寄生するKudoa iwataiと天然・養殖クロマグロに寄生するKudoa hexapunctataの実態調査およびヒト腸管培養細胞(Caco-2 cell)を用いた毒性試験により、クドア食中毒のリスク因子を解析することを目的とした。 K. iwataiについては、浜名湖産天然魚の寄生調査を実施した結果、寄生率や寄生強度はキチヌにおいて最も高く、スズキやクロダイでは低かった。病理組織観察の結果、キチヌでは変性シストが多く、次いで成熟シストが見られたが、スズキでは、成熟シストが最も多かった。キチヌにおける胞子の生残率は、シストの発育段階が未成熟、成熟、変性と進行するに伴い低下した。全体的に見て、スズキよりキチヌの方が変性シストの割合が多く、胞子の生残率も低かった。以上の結果から、K. iwatai にとってキチヌは生活環を完結できる宿主ではないこと、ヒトへの毒性は成熟シストが多いスズキの方がキチヌより高いことが示唆された。 メジマグロのKudoa hexapunctataについて、養殖クロマグロ同一群を定期的に調査し、寄生が高まる時期を特定した。K. hexapunctataは血液から10月以降に60%前後の率で検出され、筋肉からは9月下旬に検出され始めて11月には100%に達した。11月以降は検鏡でも偽シスト(胞子)として観察された。しかし、Caco-2細胞を用いた毒性試験を試みた結果、ヒラメのK. septempunctataほど強い毒性は証明できなかった。
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