平成25年度の研究遂行の結果、アミノ酸輸送体をティラピアから70種以上同定し、その組織別発現プロファイルが明らかとなり、生体内でのアミノ酸輸送機構を解明する上での情報基盤が大幅に拡充された。さらにそれらの中から組織毎に発現に偏りが確認されたものについては発現変動解析を淡水および海水個体由来の広範な組織において行った。その結果、ここまで着目していた筋肉、脳、肝臓、腸、腎臓以外の組織で高い発現を示し、飼育環境から影響を受ける輸送体遺伝子も見出され、新たな展開をもたらす重要な知見を得ることができた。加えて、細胞内浸透圧調節関連遊離アミノ酸供給源としての細胞内アミノ酸代謝システムの変化についてメタボローム解析を筋肉に着目して行うことで検討を行った。その結果、かなり多くの代謝産物において変化が見出された。同時に環境移行中に数日間の絶食期間が生じるため、対照群として環境移行を伴わない絶食の影響についても検討を行ったが、多くの代謝産物の減少が確認された。その結果、浸透圧環境の変化に対してのみ起こる応答を抽出できたため、今後は細胞内代謝経路の変化について絞り込んで解析を行うことも予定している。また、環境浸透圧上昇時の細胞内アミノ酸濃度の変化を筋肉以外の組織で検討したところ、組織特異的な変化を示すアミノ酸が存在した。そのアミノ酸種はもともとその組織で多く細胞内に存在するものであり、細胞内部に存在するそれぞれの細胞特有の高分子タンパクからの分解によるアミノ酸の加入が起こったことや、細胞特有のアミノ酸輸送機構が活性化による特定のアミノ酸の外部からの活発な取込が行なわれたことが示唆された。
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