研究課題/領域番号 |
24580262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
有元 貴文 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (20106751)
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研究分担者 |
武田 誠一 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (20155013)
馬場 治 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (40189725)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 村張り定置網 / 操業システム / 協同操業 / 技術移転 / 栄養段階 / 環境インパクト / 東南アジア / 国際情報交換 |
研究概要 |
東南アジアを始めとする発展途上国へ日本式定置網の技術移転を行う上で,日本の村張り定置網が漁村振興のためにどのような機能を果たしていたかを改めて検証する。そのために,日本各地の代表的な定置網を選んで歴史的背景と操業実態についての調査を行い,特に三陸地方の津波被害復興に際して村張り定置網がどのように漁村振興に機能するかを調査してきた。具体的には,石川県,富山県,そして宮城県の定置網について実地調査並びに資料を収集し,村張り定置網としての実態や,三陸地方での協同操業による早期復興・操業開始について確認を進めてきた。 同時に東南アジアで現在進行している技術移転の現場での操業実態や問題点・可能性について調査を行い,特にタイ国ラヨンに日本から技術移転して10年が経過したことから,改めて操業方式と収支バランスを検討し,個々の漁業者が定置網と沿岸小規模漁具を兼業する場合の所得状況について,これまでの資料をもとにシミュレーションを行った。 また,タイ国の定置網の水揚げ資料をもとに漁獲物の平均栄養段階の数値をもって資源と環境へのインパクト指標となるものかを検証するため,主要漁獲物の定期サンプリングを実施し,消化管内容物と安定同位体分析による栄養段階推定のための試料を収集し,次年度の解析に向けて準備を進めてきた。 これらの情報をもとに,操業形態や漁具構造による環境インパクトの比較や長期データからの急激な変動の兆しが現れる可能性を探り,定置網技術導入が沿岸域の資源にどのように影響するかを検証するとともに,日本の村張り定置網のシステムを途上国の漁村振興に適用するためのモデル構築のための検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内各地の大型,小型定置網について村張り機能を調査し,途上国へ技術移転する際のモデル構築に向けて研究を進めてきた。このなかで,これまでのタイ国,そしてインドネシアへの技術移転の経緯と問題点を第6回世界水産学会議で講演発表するとともに,国内でも日本水産学会においてタイ国定置網漁業者と他の沿岸漁業者との所得比較を専業と兼業で比較するシミュレーション結果を報告した。また,三陸津波復興に関連して漁業懇話会で定置網の協同操業の在り方について話題提供を行った。 タイ国の定置網に関連した資料入手は総合地球環境学研究所のプロジェクトと連携して行っており,次年度以後の研究展開のために十分な試料を蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
三陸地方での津波復興に関連した現地調査を実施し,特にこれまでの個別操業を共同操業に変更した漁場について現状把握を行い,操業システムや収支バランスについての解析に進め,富山県等の定置網先進地の現状と比較を行うものとする。 タイ国の定置網については,過去の漁獲販売資料をもとに,操業間隔と漁獲傾向についての解析,そして専業と兼業での個々の漁業者の所得についてのシミュレーションの妥当性を検討する。また,燃料消費や漁獲物の栄養段階の解析を進め,過去の長期漁獲データへの適用を行い,定置網漁具の環境インパクトの検討に進めるものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内各地定置網についての現地実態調査と資料収集を進め,特に三陸地方の津波復興の過程で定置網を協同操業によって開始した事例について宮城県での調査を実施し,各地の村張り定置網との比較検証を行う。このための旅費を使用する。 また,タイ国定置網についての漁獲販売資料について収支バランスを操業形態との関係から検討し,特に,風向風速等の操業に影響を及ぼす環境条件に対して,操業間隔と漁獲傾向についての解析を行い,兼業組合せ条件との関係から所得を最大化するためのシミュレーションモデルを構築する。資料解析補助のための謝金を積算する。 なお,定置網漁獲物の胃内容物と安定同位体分析については総合地球環境学研究所と連携して行い,このための研究所滞在のための旅費を積算する。
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