研究課題/領域番号 |
24580265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
前川 行幸 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90115733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コアマモ / 発芽 / 生長 / も場造成 |
研究概要 |
本研究の目標は、コアマモの生態、生物学的特性を明らかにすることにより、コアマモ場造成技術を開発することである。そこで平成24年度は室内環境下においてコアマモの発芽、生長、分枝などの詳しい生長特性を明らかにし、さらに天然状態でのコアマモの生育と温度、底質との関係を明らかにすることを目的として研究を行った。 これまで室内環境下で長期にわたりコアマモを培養し、その生物学的特性を明らかにしようとした研究例はない。そこで本研究では光と水温をコントロールできる大型水槽(40L)を用いてコアマモを6ヶ月以上の長期にわたり培養し、その間の発芽、生長、分枝を連続的に測定し、コアマモの生物学的特性を明らかにしようと試みた。その結果、コアマモ葉身の回転率は0.050枚/dayであり、約57.6日で葉身が交代することを明らかにした。またこれらデータから水槽内の生産力は0.724g/㎡/dayと見積もられた。この値は我々がこれまで天然群落で測定した生産力とほぼ一致し、コアマモの室内実験系を確立することができた。 コアマモの天然群落において、底質の粒度分析を行い、さらに高温耐性を明らかにするため、7-9月の高温期に15分間隔で連続して生育場所の底質温度を測定した。その結果、生育が見られる場所と見られない場所の底質の粒度組成にはほとんど差は見られなかった。しかし、生育分布は底質温度に大きく影響され、これまで測定されているコアマモの高温限界で有る30℃を超える時間が一日当たり3-4時間以上の場所では生育が見られなかった。したがってコアマモは潮間帯中、下部のような底質温度が比較的上がりにくい場所が生育に適していることが明らかになり、コアマモの移植や造成の適地選定の指標を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で示したコアマモの発芽、生長、分枝等の生物学的な生長様式の解明はほぼ順調に成果を上げることができた。特に実験室内で光や温度をコントロールし、長期培養を可能にし、生長様式を解明できたことは、今後のコアマモの生物学、生態学的に大きく貢献できるものと考える。また、コアマモの生育場所の詳しい解析から、適地選定の指標を得ることができた。特に、底質の地温に注目し、夏期の高温期に連続測定を行うことで、天然群落でのコアマモの高温耐性を明らかにすることができ、コアマモ場造成のための適地選定に大きく貢献できると考えた。 コアマモの種子を用いた発芽率の向上実験については、現在継続して行っており、温度や塩分濃度を様々に変化させながら発芽率の変化を測定中である。現在までに、温度変化、特に潮間帯に生育することから周期的な温度変化が発芽に大きく影響しているのではないかとの感触を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の実験を継続して行うとともに、室内培養されたコアマモを用いて、以下の造成試験研究を行う。 ○天然海域への移植 室内実験で発芽、生長させた幼体を容器に入れたまま天然海域に移植し、その後の生長を継続して観察記録する。この調査は平成25-26年度にかけて、連続して行う。 ○室内培養されたコアマモの生長様式と光合成産物の消費 コアマモはアマモと異なり体内にデンプンを多量に蓄積することが知られている。このデンプンを利用して地下茎の伸張や分枝を素早く行うことが可能と考える。それを確かめるため、室内培養および天然から採取した試料を用いてデンプン、スクロースなどの光合成産物の定量を行い、生長様式の解明につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
現場での調査、実験に旅費を必要とする。また、現地での調査に、調査補助員の謝金も必要とする。 室内実験系を今後も継続し、さらにHPLCによる光合成産物測定のため、薬品、ガラス器具等の消耗品を必要とする。 本年度から現場でのコアマモ移植を行う予定でいるので、移植のための基板作成費および設営のための補助員への謝金を必要とする。
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