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2012 年度 実施状況報告書

カレイ類に起こる形態異常の本質的理解と、二次黒化の根本的防除法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24580266
研究種目

基盤研究(C)

研究機関京都大学

研究代表者

田川 正朋  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (20226947)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード形態異常 / 着色型黒化 / 有眼側化 / マツカワ / ヒラメ / 黒色素胞 / 櫛鱗 / メラニン凝集ホルモン
研究概要

カレイ類の種苗生産では、体色や形態の異常個体が多い時には80%以上も出現し、本分類群の栽培漁業を推進する上で最大の障害となっている。我々はこれまでカレイ類の変態の仕組みを個体レベルで明らかにしようと試みてきた。また、変態後におこる無眼側黒化(二次黒化)は防除が困難とされる。本年度は、体色や形態異常および二次黒化についての本質解明と根本的な防除をめざし、以下のような研究を行った。結果の概要を記す。
1、マツカワにおける二次黒化部位の有眼側化および発現過程の検討  マツカワにおいても無眼側の二次黒化部位には有眼側同様に成魚型黒色素胞と黄色素胞、および櫛鱗の存在することを確認した。このことは、二次黒化が有眼側化現象である可能性が、カレイ類に共通する普遍的な現象であることを強く示唆する。また、二次黒化の発現完了時期はヒラメよりもやや遅く、孵化後6-7ヶ月であった。
2、マツカワの正常発育における黒色素細胞の出現過程とホルモン調節: 多くの魚類とは異なり、マツカワ仔魚は黒い体色を示す。しかし、仔魚型黒色素胞の密度は白いヒラメ仔魚と同様であり、黒色素胞の拡散が黒い体色の主な原因であることが明らかとなった。この色素胞のメラニン凝集ホルモンに対する感受性を調べたところ、無眼側では変態後にも感受性を示したのに対し、有眼側では変態後に感受性を失っており、機能的にも左右非対称性が認められた。
3、ヒラメの個体識別による二次黒化の発現過程: 正常に変態を完了したヒラメ稚魚にイラストマー樹脂標識を装着し、個体ごとに二次黒化の発現経過を検討した。その結果、二次黒化は黒化部位が尾部から頭部にかけて約2ヶ月間にわたり拡大したのちに停止することが確認された。また、早期に二次黒化を発現していた個体は、最終的な黒化面積が大きく、黒化発現時期が黒化程度の予測に用いられる可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通りにマツカワ変態期における基本的な情報を集積しつつある。またヒラメについても二次黒化の記載を完了した。なお、マツカワでは、予想に反して、得られたサンプルでは鱗がまだ十分に形成されていなかったため、櫛鱗の形成過程を検討することはできなかった。しかし、その代わりに、黒色色素胞についてはホルモン感受性を明らかにすることができ、研究計画全体としてはより有益な情報を得ることができた。

今後の研究の推進方策

特に方針に変更や修正すべき点はない。当初の計画通りに、アカガレイの形態異常各タイプの分類により本種形態異常の特徴を明らかにした上で、アカガレイの飼育魚および天然魚における変態前成長履歴が形態異常に及ぼす影響を解析する。また、ヒラメにおける二次黒化の発現開始時期の特定を行うことで、次年度以降にさらに詳細な検討をおこなうための基礎とする。

次年度の研究費の使用計画

当初の申請時より修正はない。飼育実験を室蘭市にある北海道立総合研究機構栽培水産試験場にて行う予定である。このため、申請者や研究協力者の大学院生が飼育現場に出張するため、および研究打ち合わせのために相手機関の飼育担当者に京都に来てもらうためなど、旅費を比較的多く必要とする。一方、大きな設備や高額の分析機器は、現有のもので十分に対応が可能であるため、設備備品費は全く不要である。
消耗品については、組織観察や計測などに用いる一般的な消耗品類、及びホルモン測定に用いる放射性同位元素標識ホルモンが毎年必要となる。飼育魚のサンプリングに関する消耗品類は申請者が購入し、飼育協力機関へと輸送することになっているが、これらも含んだ金額となっている。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Formation process of staining-type hypermelanosis in Japanese flounder juveniles revealed by examination of chromatophores and scales.2013

    • 著者名/発表者名
      Toshinori Isojima, Hirohito Tsuji, Reiji Masuda, Masatomo Tagawa
    • 雑誌名

      Fisheries Science

      巻: 79 ページ: 231-242

    • DOI

      DOI 10.1007/s12562-013-0600-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gonadal development of the primitive flatfish Psettodes erumei in Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia.2012

    • 著者名/発表者名
      Naoki Yoshikawa, Thamootharan Mammaran, Elvin Michael Bavoh, Masaru Tanaka, Masatomo Tagawa
    • 雑誌名

      Aquaculture Science

      巻: 60 ページ: 475-483

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒラメ無眼側黒化の程度におよぼす黒化開始時期および黒化中断の影響2013

    • 著者名/発表者名
      礒島俊実・深山義文・牧野直・田川正朋
    • 学会等名
      平成25年度日本水産学会春期大会
    • 発表場所
      東京都 東京海洋大学
    • 年月日
      20130326-20130330
  • [学会発表] 飼育下のアカガレイに見られる多様な形態異常は眼と体色の組み合わせの異常によって生じる2013

    • 著者名/発表者名
      浅田憲貴・松田泰平・田川正朋
    • 学会等名
      平成25年度日本水産学会春期大会
    • 発表場所
      東京都 東京海洋大学
    • 年月日
      20130326-20130330
  • [学会発表] マツカワにおけるメラニン凝集ホルモン(MCH)反応性は変態後期に左右差を生じる2012

    • 著者名/発表者名
      吉川尚樹・松田泰平・高橋明義・田川正朋
    • 学会等名
      第37回 日本比較内分泌学会大会
    • 発表場所
      福井市 福井大学
    • 年月日
      20121130-20121201
  • [学会発表] ヒラメ無眼側における着色型黒化進行過程の個体識別による検討2012

    • 著者名/発表者名
      礒島俊実・高草木将人・牧野直・田川正朋
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会秋期大会
    • 発表場所
      下関市 水産大学校
    • 年月日
      20120914-20120917
  • [学会発表] 底砂の有無がヒラメの無眼側傷修復部の黒化に与える影響2012

    • 著者名/発表者名
      越後はるな・藤浪祐一郎・田川正朋
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会秋期大会
    • 発表場所
      下関市 水産大学校
    • 年月日
      20120914-20120917

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公開日: 2014-07-24  

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