研究課題/領域番号 |
24580267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長澤 和也 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (40416029)
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研究分担者 |
海野 徹也 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニホンウナギ / 寄生虫 / 耳石 |
研究概要 |
愛媛県にある御荘湾と流入河川において採集したニホンウナギを対象に,耳石の微量元素分析を実施して回遊型を識別するとともに,鰓に寄生する単生虫類を同定して,各種の出現状況を回遊型ごとに検討して,調査地におけるニホンウナギの水域利用と単生虫類の分布特性を明らかにした。 具体的には,御荘湾の湾奥部と流入河川の蓮乗寺川と僧都川の下流域においてニホンウナギを採集して頭部から耳石を摘出し,ストロンチウムとカルシウムの濃度を測定してその比に基づいて,ニホンウナギの回遊型を識別した。また,耳石を摘出したニホンウナギの鰓に寄生する単生虫類を採集して,種の同定を行った。 その結果,ニホンウナギには4つの回遊型(I型:淡水域のみに生息した個体,II型:淡水域と低塩分域を交互に移動した個体,III型:淡水域で生活後に汽水域に移動した個体,IV型:汽水域に留まった個体)が認められた。また,単生虫類にはシュードダクチルスPseudodactylogyrus属の3種が認められ,それらはアンギレP. anguillae,ビニP. bini,カメガイイP. kamegaiiであった。これら単生虫類は,アンギレがニホンウナギI型,ビニがI型,カメガイイがIV型に主に寄生していた。 これにより,ニホンウナギには異なる水域を利用する複数の回遊型が確認されるとともに,それら回遊型には異なる単生虫類が寄生していることが明らかになった。特に,汽水域での生活履歴があるニホンウナギにカメガイイが見られたことは,この寄生虫が個体群を維持できるほど,汽水域にはニホンウナギ資源が長期的に安定して存在することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,魚類の耳石微量元素分析と寄生虫相解明という,異なる手法からの生物情報に基づいて,宿主魚類(ニホンウナギ)の生態を解明しようとするものである。研究第1年目の平成24年度には,両者の研究結果がうまくかみ合って,ニホンウナギの多様な生活様式と寄生虫の生態(特に分布特性)を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
愛媛県の御荘湾とその流入河川において標本採集を継続するとともに,日本国内の他水域においてもニホンウナギを採集して,耳石微量元素分析と寄生虫相解明を行い,ニホンウナギの多様な生活様式の解明を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策に基づき,旅費を多く用いて日本各地での標本採集に重点を置くとともに,消耗品費を用いて採集標本を処理する薬品の購入などに,研究費を使用する計画である。
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