研究課題/領域番号 |
24580267
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長澤 和也 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (40416029)
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研究分担者 |
海野 徹也 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
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キーワード | ニホンウナギ / 寄生虫 / 耳石 |
研究概要 |
昨年度に引き続き,愛媛県にある御荘湾と流入河川において採集したニホンウナギを対象に,耳石の微量元素分析を実施して主な生息域を特定するとともに,寄生虫を採集して,それら寄生虫の出現状況が生息域とどのように対応するかを検討した。その結果,流入河川の淡水域で生活していたニホンウナギはアカントケファルス属鉤頭虫の寄生を高率に受けており,淡水域で中間宿主の等脚類を餌生物として利用していることが明らかになった。また,中間宿主候補と考えられた等脚類を実際に採集して検査したところ,鉤頭虫の幼虫を検出できた。一方,御荘湾の汽水域で採集したニホンウナギの胃にはヘリコネマ属線虫の重度寄生が見られた。このため,御荘湾沿岸域において,中間宿主の可能性のあるカニ類等を採集して,ヘリコネマ属線虫の寄生の有無を調べたところ,ウナギへの感染能力を有する幼虫を見出した。このことから,ニホンウナギは汽水域においてカニ類等を多く捕食して,ヘリコネマ属線虫の感染を受けると推測された。また,流入河川でニホンウナギと同所的に生息するオオウナギの寄生虫相を調べた結果,淡水域のニホンウナギの寄生虫相と大きな差がないことが明らかになった。 以上の調査に加えて,他地域からもニホンウナギを採集して,寄生虫相を調べた。その結果,過去にニホンウナギから報告されていない寄生虫(例えばイソパロルキス属吸虫)が見いだされ,寄生虫相に関する新たな知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,魚類の耳石微量元素分析と寄生虫相解明という異なる手法を用いて,多くが未解明であるニホンウナギの生態を明らかにするものである。研究第2年目の平成25年度には,耳石からのデータに基づいてニホンウナギの生活履歴をより明確した後に,主要な寄生虫の中間宿主に焦点を当てて研究した結果,淡水域や汽水域において等脚類やカニ類がニホンウナギの餌生物として重要であることを明らかにすることができた。換言すれば,寄生虫研究を通して,ニホンウナギの食性を解明しつつあると言える。
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今後の研究の推進方策 |
御荘湾地域に加えて,日本各地でニホンウナギを採集して,耳石微量元素分析と寄生虫相解明を継続して行い,地域による寄生虫相の違いなどから,ニホンウナギの多様な生活様式の解明を図る。特に,生態的知見が極めて不足している汽水域のニホンウナギに焦点を当てて研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
ニホンウナギ資源が著しく減少しているため,当初予定していた場所でのサンプリング・購入が容易に実施できなかったことが,前年度に未使用額が生じ,その結果として次年度の使用額に変更が生じた。 ニホンウナギを確実に採集できる場所を,各地の研究機関や現地からの情報に基づいて選定し,標本の入手・購入を行う。また,ニホンウナギ採集の困難性に鑑みて,中間宿主の探索等,寄生虫の生活史の側面から,ニホンウナギの摂餌生態の解明を目指す。
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