研究課題/領域番号 |
24580268
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
足立 真佐雄 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (70274363)
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研究分担者 |
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (50211800)
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キーワード | 有害・有毒プランクトン / 形質転換 / ウイルスプロモーター |
研究概要 |
有害・有毒プランクトンの固相培養系の確立 Rhizosolenia属藻およびHeterosigma属藻の固相培養法を検討した。その結果、いずれのプランクトンも、超低濃度(0.15~0.20%)のアガロースを用いた混釈固相培養を行うことにより、コロニーが得られた。後者の種については、再現実験によりコロニー形成が認められたが、前者の種については、その後行った再現実験により追試が出来なかった。 パーティクルガンを用いた有害・有毒プランクトンへの遺伝子導入法の検討 前年度作製した藻類ウイルスのプロモーターを含む遺伝子導入用プラスミドを用いて、パーティクルガン法(Miyagawa et al. 2009)により、Rhizosolenia属藻およびHeterosigma属藻に対して遺伝子導入を試みた。その結果、前者の種について形質転換体と思われる、抗生物質ゼオシンに耐性を示す株を取得することが出来た。一方、後者の種についてはパーティクルガン法による撃ち込み後の細胞回収の際に、細胞が凝集することから、その後の塗抹の操作が困難であり、形質転換体の取得が出来なかった。 導入遺伝子の発現量解析ならびにプロモーターの適用範囲の検討 導入を図った抗生物質耐性遺伝子が細胞に導入されたか推定するために、ゲノミックPCRを実施した結果、Rhizosolenia属藻については、野生株には見られない増幅産物が認められたため、遺伝子は導入されたと考えられた。そこで、これが発現しているか確認するために、RT-PCRを実施した。その結果、野生株には見られない抗生物質耐性遺伝子に由来すると考えられる増幅産物を確認出来たことから、導入遺伝子は発現していると考えられた。 以上の結果により、これまで遺伝子導入に関する報告が全く無い上記2種の有害藻のうち、ノリの色落ちなど引き起こすRhizosolenia属藻の遺伝子導入に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「有害・有毒プランクトンの固相培養系の確立」に関しては、交付申請書に記載したノリの色落ちの原因藻の1種として知られる珪藻Rhizosolenia属と、魚類の斃死を引き起こすラフィド藻Heterosigma akashiwoとを用いて検討した結果、いずれもコロニーを得ることが出来た。後者の種については、再現実験によりコロニー形成が認められたが、前者の種については、その後行った再現実験により追試が出来なかった。さらに、「パーティクルガンを用いた有害・有毒プランクトンへの遺伝子導入法の検討」については、前者の種について形質転換体を取得することが出来た。一方、後者の種については形質転換体の取得が出来なかった。また、「導入遺伝子の発現量解析ならびにプロモーターの適用範囲の検討」については、前者の種については、細胞内への遺伝子の導入を確認することが出来た。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた結果に基づき、次年度は以下の研究項目について検討する。 1、パーティクルガンを用いた有害・有毒プランクトンへの遺伝子導入法の検討 Heterosigma属藻については、形質転換時の細胞回収時に、細胞が凝集しないように、走光性を利用するなどして遠心分離を行わずに細胞を集める手法について検討した上で、形質転換が可能か検討する。 2、導入遺伝子の発現量解析ならびにプロモーターの適用範囲の検討 Rhizosolenia属藻については、導入遺伝子が発現しているかどうかについて、RT-PCR法などにより検証すると同時に、使用したプロモーターを他の藻へも適用可能か検討する。 3、有害・有毒プランクトンに適用可能な優良プロモーターの選抜 得られた藻類ウイルスプロモーターに関する塩基配列情報、ならびこれまでの検討により得られたそれぞれのプロモーターの形質転換効率を加味して、優良プロモーターの配列情報を抽出する。さらに、これを組み合わせるなどして、元のウイルスプロモーターと比較して、さらに強く導入遺伝子を発現させるものが作成可能か検討する。
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