研究課題/領域番号 |
24580273
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
伊丹 利明 宮崎大学, 農学部, 教授 (00363573)
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研究分担者 |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クルマエビ / ワクチン / 抗体用因子 / サイトカイン / 受容体 |
研究概要 |
DNAワクチンを投与し、血球遊走性を確認したクルマエビの血液から、縮重プライマーを用いてマクロファージ遊走阻止因子(MIF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、骨形成因子(BMP)およびMstn(骨格筋形成抑制因子)関連遺伝子を分離し、全長を明らかにした。これらの因子は哺乳類におけるサイトカインとしての機能を持っており、甲殻類からは初めての報告である。これらのサイトカインは炎症反応における白血球動員、免疫反応の調節、マクロファージ系細胞の遊走促進など免疫反応と深く関係している。これらのサイトカイン様遺伝子の感染時における発現解析を行ったところ、VEGFは細菌感染の初期に約30倍に、またウイルス感染では後期に約80倍に発現が上昇することが解った。一方、Mstnではこれらの感染において、感染後期に約1/100に発現が抑制されることが解った。これらの結果から、VEGF,とMstnは細菌やウイルスによる感染に対して鋭敏に反応していることが解った。さらにdsRNAをクルマエビに注射して、これら遺伝子をノックダウンを試みたところ、遺伝子はノックダウンされ、注射後10日後にはいずれのノックダウン区のクルマエビも死亡率が対照区より高かった。このことからも、これらのサイトカイン様遺伝子はクルマエビの恒常性維持に不可欠であることが明らかとなった。MIFについて立体構造予測を行ったところ、単量体だけでなく、比較的安定な3量体の立体構造が予測された。また、VEGFについて立体構造予測を行ったところ、2量体の構造が予測できた。 自然免疫関連遺伝子の網羅的定量解析に用いる、マルチプレックスRT-PCR用のプライマーセットを整備し、細菌感染ではTollとToll2遺伝子などが特異的に発現することが明らかとなった。ウイルス感染ではDicer2とArgonaute2遺伝子が特異的に発現することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回、ワクチン効果判定のために上記4種類のサイトカイン様遺伝子を明らかにした。現在さらに6種類以上のサイトカイン様遺伝子の解析を行ったおり、当初計画以上に進行している。さらに、自然免疫関連遺伝子の網羅的定量解析に用いる、マルチプレックスRT-PCR用のプライマーセットに上記サイトカインを加えたセットも作製でき、各遺伝子発現解析用のプライマーをリアルタイムPCRによって検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在上記サイトカイン様遺伝子のタンパク発現をバキュロウイルスプロモーターを用いた昆虫細胞系で行う予定にしている。従来の大腸菌系の発現系を用いると、痕跡程度にのこるLPSによって、クルマエビの血球が反応することが危惧されるので、バキュロプロモーター系を使うこととした。すでに予備実験を行っており、タンパク作製の目途はついている。一方、VEGFの受容体(VEGFR)に関する遺伝子情報も入手できたので、VEGFRのタンパク発現をCHO細胞系を用いて発現させる予定にしている。本年度はワクチン評価に用いることのできるサイトカイン因子をタンパクレベルで発現させ、リガンドと受容体の関連性を詳細に調査する。 同時にこれらサイトカイン様遺伝子をマルチプレックスRT-PCR用のプライマーセットに加えたセットをワクチン投与エビで再度検証して、現在対象としてるサイトカイン様遺伝子以外の遺伝子で、ワクチン応答に関与する遺伝子の洗い出しを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の成果を6月25~28日にスペインで開催される”The International Society of Fish and Shellfish Immunology”で発表する。さらに、上記サイトカイン様遺伝子のバキュロウイルスプロモーター系を用いたタンパク発現と受容体のCHO細胞上での発現を行って、リガンドと受容体の相互関係を明らかにする。これらの結果から、ワクチン評価に最適なサイトカインあるいはその受容体を選択し、指標とする。これらの基礎的実験に基づいた結果からマルチプレックスRT-PCRによる網羅的遺伝子発現システムによって検出可能かどうかを検討する。
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