最終年度は、培養カイアシ類の給餌効果と培養カイアシ類の栄養価を明らかにすることを目的として、研究を遂行した。給餌効果に関する実験については、昨年度より培養を成功させているPseudodiaptomus inopinusを使用して実験を行ったが、単独給餌が可能となるほど個体数が増加しなかったため、26年度前半ではマダイ仔魚を使って一般に海産魚類種苗生産で初期餌料として用いられているワムシとの混合給餌を行い、摂餌選択性を調べる実験を行った。また後半にはカイアシ類単独給餌を行った場合のマダイ仔魚飼育の成績について検討した。 結果として、マダイ仔魚はカイアシ類に初めの頃こそ選択性を示さなかったものの、次第にカイアシ類に選択性を示すようになった。つまり、人為的に培養したカイアシ類を給餌した場合、仔魚がカイアシ類を積極的に摂餌する可能性が高く、仔魚の餌料として有効であるといえる。一方、カイアシ類単独給餌を行ったマダイ仔魚は生残率が低かった。原因としては、ワムシおよびアルテミアを給餌した場合に比べて、圧倒的に給餌量が少なかったことが考えられる。 人為的に培養したカイアシ類の単独給餌での生残率は低かったものの、生残する仔魚は明らかに存在し、それらは成長を示していた。培養したカイアシ類で仔稚魚を飼育した例は少なく、生残率は低かったものの、摂餌誘引性があることが確認されたことは、生物学的にも、水産学的にも非常に意義深く、今後の海産魚類種苗生産での餌料生産にとって重要な知見を得ることが出来た。 研究期間全体を通しても、カイアシ類の培養を継続的かつ安定的に実施する技術が確立し、これによって培養出来たカイアシ類を使った仔魚飼育の目処が立ったことにより、飼育モデルの達成をほぼ完遂できたと言える。
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