研究課題/領域番号 |
24580276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
安樂 和彦 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (50274840)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 台湾 / 視覚 / 顕微分光計測 / 網膜電図 |
研究概要 |
集魚灯が搭載する光源波長設計時に有益な魚類視感度を一般的な電気生理技術である網膜電図法(ERG)を用いて計測及び評価する際の閾値決定方法を確立した。従来、閾値決定は実験者の定めた最低応答電圧を指標に判断され、実験者ごとに結果の相違が生じることが考えられているが、本研究において、十分に強い光刺激に対する応答波形をテンプレート波形f(t)とし、それより弱い光刺激に対する応答波形g(t)との①遅延時間の分析および、②遅延時間補正後の両波形類似性の分析を行うことで、g(t)に光刺激に対する応答成分が認められるか否かを判定する方法を開発した。上記2項目の分析は正規化相互相関法で行うこととした。すなわち、遅延時間については相互相関法により遅れ時間τを求めることとし、波形類似性については遅れ時間τにおける相互相関係数(=相関係数)として得た。また、本手法を簡易に利用するために、一般的な表計算ソフトを用いて実験時に迅速に応答有無を判断できるワークシートとして完成させた。 国内では計測事例が極めて少ない単一視細胞の分光吸収特性を計測する視細胞用の顕微分光計測装置を設計・製作した。原理的には諸外国の視覚生理学研究室が所有する同装置を模倣したもので、設計には台湾・中央研究院・研究員・厳宏洋博士の協力を得た。これまでに動作確認を終えており、次年度以降、本装置を用い、集魚灯対象魚種の視覚特性の解明を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画した、①網膜電図(ERG)記録システムの構築については完了、②顕微分光光度計(MSP)の試作については完了、③特定魚種を用いたERGおよび試作MSP機器による計測結果と既往文献との計測結果の比較については、現状でキンギョを用いたERG実験を実施し、既往文献との整合性を確認している。試作MSPでの視細胞分光吸収特性の計測は現在準備中であり、4月後半から実施を予定している。現段階で試作MSP機器の動作確認は終了しており、詳細な校正作業を行っている状況である。網膜電図記録システム構築の成果については日本水産学会で口頭発表している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に完成させた網膜電図記録およびその分析を概ね自動化するシステム、さらに試作顕微分光光度計を用い、平成25年度には集魚灯漁業対象魚種を供試魚としてこれまでに未解明な魚種の視覚特性を明らかにする。また、当該事業によって得られた多種の視覚感度特性を一般化、すなわち数値化して示す方法についても検討し、研究成果を研究者のみならず、集魚灯等の水産用光デバイスを開発する技術者にも活用しやすい成果の普及方法についても検討する。 平成25年度において計画している各種光源の発光効率の推定や、水中伝搬した光の視覚への作用のモデル化についても既往の文献等から得られる必須知見の抽出をすでに進めている段階にある。 当該事業の研究の方向性については平成24年度に完成させたノウハウおよび機器によって順調に進行するものと判断している。今後は、集魚灯に関わる研究を実施している国内の他研究者との情報共有を図りつつ、当該事業成果の実用性を高める努力を図ることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度において顕微分光計測機器を完成させており、平成25年度においては当該研究課題である集魚灯設計スペック決定への貢献を目的とし、開発機器を用いて集魚灯漁業対象魚種の視覚特性の解明を行う。そのために、実験に使用する魚種の入手、スライドグラスや薬品等の購入のために研究費を使用する。また、水中という光学的に特殊な環境下での光の伝搬をシミュレーションする方法を検討するため、複数海域における海水の光学的特徴を計測するための旅費を支出する。
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