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2013 年度 実施状況報告書

東日本大震災による地盤沈下にともなう新旧潮間帯生物群集の動態

研究課題

研究課題/領域番号 24580279
研究機関北里大学

研究代表者

加戸 隆介  北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (40161137)

研究分担者 難波 信由  北里大学, 水産学部, 准教授 (20296429)
キーワード地盤沈下 / 潮間帯 / 生物相遷移 / 外来フジツボ
研究概要

震災後2年目の潮間帯生物相の遷移過程の把握を、昨年に引き続き越喜来湾崎浜第二防波堤において、水中カメラを使って隔月に生物相を深度別に撮影し、その画像から種数、密度を調べた。同時に水温、塩分、クロロフィル蛍光などの環境要因を調べた。さらに、潮間帯への生物加入状況を試験板を使って毎月初旬に継続して調査した。
その結果、2年目の生物相の特徴としては、1)震災後に多様性が増加した群集は平均水面下100cm以下でキタムラサキウニによる摂食圧の増加により多様性(種数)が低下した状態が続いている。2)それ以浅では震災前のマガキ、エゾカサネカンザシの2種が優占した群集から、イワフジツボ、チシマフジツボ、ムラサキイガイ、Perforatus perforatus(新規外来フジツボ)、アカフジツボ、マガキ、エゾカサネカンザシが混在する群集への変化し、維持されていると判断された。2)潮下帯に沈下した震災前の群集(マガキ、エゾカサネカンザシ)は潮下帯に常時移動したことにより、群体ボヤなどによる被覆が確認されていたが、震災後2年目には潮下帯に確認できなくなったことから、死亡した可能性がある。
付着試験板による付着生物の経月加入状況をみると、アカフジツボで付着盛期が震災前の8月から震災後に10月にシフトし、密度も増加傾向であったのに対し、その他の付着動物の密度は震災前に比べ減少傾向を示した。ただし、その密度は過去の平均値と有意差はなかった。震災後に出現したP.perforatusの付着時期は7-9月で、2012年に比べ2013年に付着時期が1ヶ月早まり付着密度も9倍に増加した。
以上、震災後の生物相は震災前に比べて高い多様性を維持して推移していると判断できるが、キタムラサキウニの密度は震災前の1個体/㎡から16個体/㎡に漸増しており、今後の密度の推移と潮間帯生物相の関係を注視する必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)地盤沈下による満潮時の冠水のため多くの防波堤で嵩上げ工事が進み、岸壁生物を剥離後にコンクリート補強が進んでいるが、調査場所(防波堤先端)では幸い嵩上げ工事がまだ実施されていないため、同じ場所で継続的に調査観察が実施出来ている。
2)当初目的であるa)新たに形成された潮間帯生物群集の追跡調査、b)沈下した生物群集の追跡調査、c)潮間帯への生物加入時期と密度の比較、の何れも予定通り進行できている。
3)昨年度は未解析であったプランクトン中のフジツボ幼生の密度解析も進行中である。

今後の研究の推進方策

1)3年目の生物相の追跡調査:2014年(平成26年)度は2回の調査を予定していたが、さらに調査の継続が必要と判断された。平成26年度の計上研究予算が限られるため、前年度の繰越金(約37万円)を平成26年度の調査予算に組み入れることとし、4月(付着生物加入月調査時に実施)、8月、12月に調査を行う予定である。この際、増加しているキタムラサキウニの密度の変動と摂餌圧に留意し、潮間帯付着生物の垂直幅の変化に注目しながら解析を行う。
2)付着生物加入の3年目の経月変化の様相の把握:最終年には調査を予定していなかったが、震災後に調査を開始した8月まで(3年間36ヶ月)調査を続けることが望ましいと判断されたため、4~8月までの毎月初旬に4回の調査を同様の手法により実施する。
3)新規外来フジツボの密度変化に留意しながら、浮遊幼生の同定方法についても形態分類を中心に飼育実験や形態観察を実施する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額が生じた状況:付着試験板の予定使用枚数が初年度に製作・納入された枚数で充当できたため、追加製作・納入に予定していた額(20万円)を使用しないで済んだこと、および予定の調査が別予算の関連調査と並行して実施出来たために、旅費が今年度予算を下回ったことによる。
翌年度分予算と合わせた使用計画:当初計画では、翌年度(平成24年度)に潮間帯生物相調査を2回(8月および12月)実施予定であった。これまでの震災後に試験板による付着生物の経月加入状況の調査を32ヶ月実施してきており、平成24年度の4月、5月、6月、7月にも実施(4回)することにより、震災後丸3年(36ヶ月)のデータが得られることになる。そのため、上記の次年度使用額(341,254円)を平成24年度の予算額(200,000円)に組み入れ(総額571,254円)、年間6回の調査旅費(566,000円)として執行することとする。主な予算支出内容は以下の通りである:相模原-水沢江刺間の鉄道運賃(学生1名:24,200円/月+教員1名:28,200/月、年6回=314,400円)、レンタカー代(3日間:25,500円/回,年6回=153,000円)、宿泊費(学生1名+教員1名:16,500円/2名、年6回=99,000円)に充当する(総額 566,000円/年)。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] 越喜来湾崎浜岸壁および大船渡湾上平岸壁における震災前後の生物相の変化と課題.

    • 著者名/発表者名
      加戸隆介・長野聡一郎・辻 秊宏・小笹秀明・吉田冬人・木村敏宏・酒井あずさ・難波信由
    • 学会等名
      北里大学海洋生命科学部・岩手県水産技術センター合同セミナー(第3回)
    • 発表場所
      大船渡市(岩手県大船渡地区合同庁舎)
  • [学会発表] 岩手県越喜来湾における震災前後の付着生物の加入と群集構造の変化

    • 著者名/発表者名
      長野聡一郎・辻季宏・小笹秀明・吉田冬人・木村敏弘・酒井あずさ・平野健志・難波信由・加戸隆介
    • 学会等名
      平成26年度日本付着生物学会研究集会
    • 発表場所
      東京(東京海洋大学)
  • [学会発表] 東日本大震災が岸壁の潮間帯生物相にもたらした影響と新たな課題

    • 著者名/発表者名
      加戸隆介
    • 学会等名
      平成26年度日本水産学会春季大会シンポジウム
    • 発表場所
      函館(北海道大学水産学部)
    • 招待講演
  • [学会発表] 三陸の沈下した防波堤岸壁面の潮間帯生物群集における震災後2年間の遷移と新たな外来フジツボの侵入

    • 著者名/発表者名
      加戸隆介・濱口 光・岡野桂樹・長野聡一郎・辻 季宏・小笹秀明・吉田冬人・木村敏宏・酒井あずさ・難波信由
    • 学会等名
      2013年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
    • 発表場所
      仙台(東北大学農学部)
  • [学会発表] 東日本大震災が潮間帯生物の多様性に与えた影響とその評価

    • 著者名/発表者名
      加戸隆介
    • 学会等名
      日本学術会議主催学術フォーラム
    • 発表場所
      東京(日本学術会議)
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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