研究課題/領域番号 |
24580282
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
西野 康人 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (50424677)
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研究分担者 |
中川 至純 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (70399111)
谷口 旭 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (30002091)
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キーワード | 海氷 / アイスアルジー / プランクトン / クロロフィル / セディメントトラップ / 生産力 |
研究概要 |
海氷生成が生態系の出発点である一次生産にどのような機能を果たしているかを明らかにすることを目的に、海氷生成から崩壊・融解までの過程を調査することが可能である定着氷に着目した。調査地はオホーツク海と湖口でつながり、陸水の影響が少なく、冬季に結氷する沿岸海跡湖能取湖とした。 平成24年度は、海氷ならびに海水中の一次生産者の動態および環境変動の把握につとめた。氷上調査(2月7日―3月29日、計8回)では、海氷・海水サンプル(サイズ別クロロフィル濃度測定用、栄養塩濃度測定用、検鏡用)の採集、ネット採集(目合い:330 μm、100 μm)、CTD観測(水温・塩分・蛍光値等の鉛直プロファイル)ならびに光量子計による光環境の鉛直プロファイルを測定した。さらにセディメントを層別にセットし(1m, 5m, 10m, 15m)、調査ごとに回収し、乾重量とクロロフィル濃度測定ならびに検鏡用サンプルとした。結氷前に海底にセディメントトラップをセットし、結氷前から融解後までの沈降物の連続的採集を行ない、アイスアルジー等の沈降量の測定をおこなった。 平成25年度は、24年度の結果を受け、海氷ならびに海水中の一次生産者の動態および環境変動の把握するために、氷上調査は2月6日から3月19日まで行ない、およそ週1回の頻度(計7回)で調査を実施した。加えて、ホルマリンの有無による沈降物の違いを評価するために、結氷後にセットした層別セディメントトラップはホルマリン添加タイプと未添加の2セットを実施した。さらに、水柱中の一次生産力を評価するために、調査地に24時間設置する現場法により生産力の測定を実施し、測定は酸素法を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた調査は、平成24年度に実施した調査項目(氷上調査、結氷前から融氷期にわたるセディメントトラップ調査)に加え、氷上調査時の水柱中の生産力の測定、層別セディメントトラップのホルマリン添加タイプでの採集、各セディメントトラップに小型センサー(水温、光量、深度)を設置し、環境データの連続データの取得であった。 氷上調査は2月6日から3月19日にかけて実施し、結氷期間中の調査データは予定通り取得できた。結氷前に海底にセットしたセディメントトラップは4月28日に収用し、トラップサンプル(7本)とセンサー(水温、光量、深度)を回収した。水柱の生産力測定は、天候の影響および機材の不調等のため、データが得られたのは2/13と2/27の2回であったが、結氷期の水柱における生産力の測定データが得られた。結氷期の氷上調査時にセットした層別セディメントトラップは、ホルマリン添加タイプは全調査で取得できたが、ホルマリン未添加タイプは3/12-19のセットはロープが切れたため回収できず、上記期間のみ欠測となった。 一部、データを取得できない項目もあったが、おおむね予定していた調査項目は実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、氷上調査で得られたサンプルの分析(クロロフィル測定、栄養塩測定等)を行なったのち、データの解析を実施する。その結果を踏まえ、平成26年度の調査内容の計画を検討する。現時点では、平成26年度は、24,25年度と同様の調査を実施しつつ、生産力の測定回数を増加、そして海氷中の微小動物プランクトンの動態調査を実施する予定である。 生産力の測定回数を増加させることで、精度をあげ、かつ海氷の状況(生成初期から融氷期)により水柱の一次生産がどのように変化するかを把握する。 微小動物プランクトンは微生物食物網を構築する生物群であり、24年度の結果より海氷中で生息していることが明らかとなった。これら生物群は動物プランクトンの重要な餌料源とも考えられる一方、アイスアルジーの摂食者ともなる。微小動物プランクトンの海氷中における動態は海氷ならびに水柱における一次生産量に影響をおよぼしていると推察される。 平成26年度はこれまでの調査に上記2項目を調査に加え、海氷生成が生物生産に与える影響についてまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
フィールド調査で予定していた実施項目のうち、天候の影響により調査日によっては実施項目を減らさざるを得ない状況となったため 今年度は、これまで得られた成果を学会発表ならびに論文投稿といった形で公表していく予定。これらの旅費、投稿料等に予算を使用する。また、フィールド調査も昨年度同様に実施するため、これに要する消耗品類等を購入する。
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