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2012 年度 実施状況報告書

魚類ヘルパーT細胞亜集団の同定

研究課題

研究課題/領域番号 24580284
研究種目

基盤研究(C)

研究機関日本大学

研究代表者

森友 忠昭  日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20239677)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードペルパーT細胞亜集団
研究概要

目的:我々はコイのCD4+T細胞(Th細胞)が単クローン性に増殖できる培養系を確立しており、これまでに哺乳類のTh亜集団の1つであるTh2様のクローンを得ている。そこで本研究では、さらに多くのクローンを作製し、それらの性状を解析することで、魚類Th亜集団の探索を試みた。
方法:支持細胞層を形成させた25cm²フラスコ上で、コイ腎臓白血球を20%FBS及び2.5%コイ血清を添加したE-RDF培地で培養した(バルク培養)。これにより増殖した細胞を顕微鏡下で1細胞ずつ分取し、支持細胞層を形成させた96穴プレートの各穴に1細胞ずつ播種した。これらの1細胞からコロニーを形成させ、さらに拡大培養を行った。なお、培養液にはバルク培養の上清と、T細胞増殖因子であるコイIL-2のリコンビナントタンパク(rIL2)を作製し、添加した。
結果:上述の培養系でrIL2を添加したところ、無添加の場合と比べ、コロニーが形成されたウェル数が約2倍に上昇した。得られたT細胞クローンを継代したところ、3つのクローンにおいて長期培養が可能となった(クローンNo.1, No.2, No.3)。これらのクローンはTCR-α, -β, 及びCD4-1の発現が見られたが、CD4-2, CD8α及びCD8βの発現は見られなかった。次に、各クローンをT細胞マイトジェンであるPHAで刺激し、刺激後に発現量が上昇するTh関連サイトカイン遺伝子を調べたところ、クローンNo.1では魚類のTh2サイトカインであるIL-4/13A及びIL-4/13Bの発現上昇が見られたが、クローンNo.2ではTh1サイトカインであるINFgの発現上昇が見られた。
以上のことから、魚類においてもTh1およびTh2亜集団が存在することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

真骨魚類は,哺乳類と同様,T・B細胞を主体とした獲得免疫機構を持つ.そのため獲得免疫反応の中心的な制御機構を構成するTh亜集団の存在や性状を調べることは,魚病の病態解明・予防・ワクチン開発などに大きく貢献するものと思われる.このような背景から,近年魚類でも,Th亜集団の同定に向けた多くの研究が行われて来ている.しかし,その多くは,哺乳類遺伝子との相同性に基づく,魚類Th関連遺伝子の単離と,臓器・組織レベルの発現解析によるものであり,魚類Th亜集団の存在を直接証明していない.また,最近では,Th表面マーカー遺伝子の組換えタンパク質の合成と,それに対する抗体を作製し,哺乳類のTreg類似の集団をミドリフグで分離できたとの報告もある.しかし,この手法も,アイソフォーム遺伝子の多い魚類では,抗体の特異性が問題となったり,また,魚類に特有のTh亜集団を見逃したりする可能性もある.一方,我々が行うクローン化T細胞株の作製技術は,1個のTh細胞から増幅させるため,細胞の均一性は完全に担保される.また,哺乳類には無い,魚類特有のTh亜集団も発見できる可能もある.この様に,申請者らの取組みは,従来の研究手法と一線を隔すものであり,いままでにない,新たな発見が期待できる.

今後の研究の推進方策

Th亜集団の同定には,Th1サイトカイン(IFNγ2・TNFα),Th2サイトカイン(IL4/13A,IL4/13B,IL10),Th17サイトカイン(IL17,IL22)およびTregサイトカイン(TGFβ,IL10)などの発現解析を各細胞株について行なう必要がある.また,哺乳類Th亜集団のそれぞれの分化や機能維持には,特異的な転写因子の発現が重要である.すなわち,Th1,Th2,Th17およびTregにはそれぞれ,T-bet,GATA3,RORγtおよびFoxP3が発現していると考えられる.そこで,これら転写因子遺伝子についても,各細胞株で発現の有無を調べ,サイトカイン産生パターンと合わせて,Th亜集団の同定を行う.

次年度の研究費の使用計画

該当なし.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Expression profiles of interferon gamma genes in response to immunostimulants and alloantigen in ginbuna crucian carp Carassius auratus langsdorfii2013

    • 著者名/発表者名
      Araki, K., Takizawa, F., Yamasaki, M., Esumi, M., Moritomo, T., Ototake, M., Yamamoto, A., and Nakanishi, T
    • 雑誌名

      Fisheries science

      巻: 79 ページ: 213-220

    • DOI

      10.1007/s12562-012-0590-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clonal growth of carp (Cyprinus carpio) T cells in vitro: Long-term proliferation of Th2-like cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi T, Katakura F, Someya K, Dijkstra JM, Moritomo T, Nakanishi T.
    • 雑誌名

      Fish & Shellfish Immunology

      巻: 34(2) ページ: 433-442

    • DOI

      10.1016/j.fsi.2012.11.005

    • 査読あり
  • [学会発表] コイのヘルパーT細胞亜集団

    • 著者名/発表者名
      染谷 和江・山口 卓哉・藪 健史・森友 忠昭・中西 照幸
    • 学会等名
      平成24年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      下関水産大学校
  • [学会発表] Clonal culture of carp Th2-like cells whose immune status is hallmarked by IL-4/13B gene expression

    • 著者名/発表者名
      T. Yamaguchi, F. Katakura, J.M. Dijkstra, T. Moritomo, and T. Nakanishi
    • 学会等名
      12th International society of developmental and comparative immunology
    • 発表場所
      Hilton Fukuoka Sea Hawk Hotel
  • [学会発表] Carp thrombopoietin in combination with kit ligand a induces the formation of colonies derived from unipotent progenitors for thrombocytes and bipotent progenitors for thrombocytes and erythrocytes

    • 著者名/発表者名
      Y. Sugie, F. Katakura, T. Yamaguchi1, T. Kato, T. Yabu, T. Moritomo and T. Nakanishi
    • 学会等名
      12th International society of developmental and comparative immunology
    • 発表場所
      Hilton Fukuoka Sea Hawk Hotel
  • [備考] 研究概要

    • URL

      http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~vetfish/start.htm

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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