研究課題
申請者らは既にコイヘルパーT細胞(Th)の培養法を確立している.具体的には,コイの腎臓白血球を分離し,胸腺由来細胞株などの支持細胞上で培養すると,白血球の活発な増殖が観察され,これら細胞を新たな支持細胞上にまきなおし,継代することで,長期間に亘る細胞の増殖が維持できる.これら増殖した細胞の遺伝子発現を調べたところ,CD4-1・CD4-2・lck・CD3δなどの各種Th細胞関連遺伝子の発現が確認されたが,他の血球マーカー遺伝子の発現は認められなかった.また,多種類の機能的なTCR Vα・Vβ鎖遺伝子の発現は認められたが,Vγ・Vδ鎖遺伝子は“stop codon”や“frame shift”を伴う非機能的な配列がほとんどであった.これらのことは,本培養系ではCD4+CD8-のαβT細胞,すなわちヘルパーT細胞がポリクローナルに増殖しているものと考えられた.そこで,本年度は,このコイヘルパーT細胞培養から細胞を1個づつマイクロピペットを用いて釣りだし,これら1個のTh細胞由来のクローン化T細胞株の樹立を試みた.また,コイのクローン化T細胞の培養に近縁種である,リコンビナントゼブラフィッシュIL-2(rzIL-2)を作製し,同クローン化Th細胞の培養に添加した.
2: おおむね順調に進展している
コイヘルパーT細胞亜集団を同定する目的で,コイTh細胞を1個釣りしリコンビナントIL-2存在下で培養したところ,複数のクローン化Th細胞が得られた.これらクローン化Th細胞の性状を調べたところ,PHA刺激によりIFNgやIFNg-rel遺伝子の発現が増強されるTh1様のクローンやIL4/13遺伝子発現が増強されるTh2様のクローンそして両方の性状を持つTh0様のクローンなど,魚類のTh1およびTh2の性状解析およびそれらの分化に有用なクローンが多数得られていた.
今後の研究方策としては,25年度研究で得られた,コイTh1およびTh2様クローンを用いて,サイトカイン遺伝子の発現のみならずt-bet,gata3などの転写因子の遺伝子についても,各クローンで発現の有無を調べ,魚類Th亜集団の同定を行う予定である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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