研究概要 |
ニシキゴイ遺伝的全雌群を用いて通常飼い区と成長抑制(締め飼い)区を作成し、それぞれについて孵化後2,3,4,6ヶ月より、4,8,12ヶ月間のアロマターゼ阻害剤投与試験を行なった。現在までのところ処理開始前と処理終了直後の生殖腺試料を取得し、組織学的解析を行なっている。処理終了時において全般的に通常飼い区の方が締め飼い区よりも生殖腺が発達していたが、全ての群において生殖腺の精巣化が観察された。4ヶ月間処理では、通常飼い孵化後2,3ヶ月処理開始区ではほぼ完全な精巣化が確認されたのに対して、4,6ヶ月処理開始区では処理終了時における卵母細胞の残存数が顕著に増加した。一方、締め飼い区では2,3,4ヶ月処理開始区でほぼ完全な精巣化が確認されたが、生殖細胞の増殖が見られず卵巣形成および精巣形成のいずれとも判断できない個体も多数見受けられた。処理期間の延長(8,12ヶ月)に伴って、締め飼い区ではほぼ全個体で精巣化が確認されるようになったが、通常飼いのうち処理開始時期が遅い(孵化後4,6ヶ月開始)実験区では卵巣組織の残存が顕著となった。以上の結果は、体成長に伴って遺伝的雌生殖腺の卵巣への分化が進行し、それに伴って性的可塑性(潜在的精巣化能力)が低下していくことを示している。現在、処理終了後の継続飼育実験を行っており、アロマターゼ阻害剤により誘導された精巣組織のその後の状況を追跡することで、不可逆的な効果であるかどうかの確認を行っている。以上の研究を遂行する過程でギムザ染色を応用することにより、卵巣化の組織学的指標となる初期周辺仁期卵母細胞を選択的に染色できることを見出した。組織学的評価の簡便化につながることが期待される。 熊本大学との共同研究により、メダカにおいて生殖腺刺激ホルモン受容体(FSHR)の遺伝子欠損によって卵巣の発達不全とそれにともなう精巣化が生じることが明らかとなった。
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