研究課題/領域番号 |
24580289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
山口 峰生 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (00371956)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ツボカビ / 菌類 / 渦鞭毛藻 / 寄生 / 海洋 / シスト / 有毒プランクトン |
研究概要 |
本研究では,海域における一次生産者のみならず,有害藻類ブルームの原因生物として極めて重要な渦鞭毛藻を寄主とするツボカビ類について,形態および遺伝情報に基づく分類学的検討および現場でのモニタリング手法の開発を行うことにより,海洋生態系におけるそれらの多様性と機能を明らかにすることを目的とする。海産渦鞭毛藻を寄主とするツボカビの探索を行うため,震災後,有毒プランクトンAlexandriumのシスト密度が急激に増大した仙台湾の海底泥試料を12.5℃,光照射下で培養したが,Alexandriumに寄生する菌は確認できなった。一方,培養開始から22~25日後にScrippsiella属と思われるシスト本体に寄生する菌が認められた。光学顕微鏡による形態観察の結果,遊走子嚢は寄主への付着部部分が細く,先端が太い逆洋ナシ型を呈し,遊走子放出管に蓋が無い無弁型であった。遊走子は球形で大きな油球1個と鞭毛を1本有し,その逆方向に遊泳した。鞭毛の全長は遊走子頭部の約5倍程度で,先に発見したAlexandrium寄生菌に比べて短かった。以上の形態的特徴から本菌もツボカビの一種であると考えられた。さらに,本菌のリボゾーム遺伝子の塩基配列を決定したところ,2009年にSimmonsらによりツボカビ門内に認識されたクレードの1つであるロブロミセス目(Lobulomycetales)に近縁である可能性が示された。宿主シストについてもリボゾーム遺伝子塩基配列を決定した結果,これがScrippsiella trochoideaのシストであることも判明した。これらの結果は,海産渦鞭毛藻のシストに直接寄生するツボカビの存在を初めて明らかにするものであるとともに,海産渦鞭毛藻に寄生するツボカビが多様なグループから構成されていることを示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渦鞭毛藻Scrippsiellaのシスト本体に寄生する新たなツボカビを発見し、その形態学的特徴および遺伝子解析を行って本菌が近年ツボカビ門内に記載されたロブロミセス目(Lobulomycetales)に近縁である可能性を示した。これらの成果は海産渦鞭毛藻のシストに直接寄生するツボカビの存在を初めて明らかにするものであるとともに,海産渦鞭毛藻に寄生するツボカビが多様なグループから構成されていることを示しており,本課題はおおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
我が国沿岸海域から得られた海底泥試料について,引き続きツボカビの探索を行う。試料から泥懸濁液を調製し,これを一定温度,明暗周期のもとで培養後,光学顕微鏡観察により寄生性ツボカビおよびそれらの遊走子が付着した寄主細胞を探索する。探索でみとめられた寄生性ツボカビについて分離・培養を行い,菌体の特徴を把握する。培養過程での菌体の発達過程を経時的に調べるとともに,遊走子嚢および遊走子の形成および形態を明らかにする。ツボカビ門においては,とくに遊走子の構造が形態分類の重要な基準とされていることから, 走査電顕および透過電顕を用いてその微細形態を精査する。また,寄生性ツボカビの菌体からDNAを抽出後,リボゾーム遺伝子の塩基配列を決定し,分子系統解析を実施する。得られた形態学的および分子系統学的特徴を基に分類学的検討を行う。さらに,寒天培地などを用いて,ツボカビの継代培養を試み,その生活環の解明を目指す。現場海域における寄生性ツボカビの動態解明のツールとしてFISH法,LAMP法および定量PCR法による分子モニタリング技術の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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