研究課題/領域番号 |
24580294
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐伯 宏樹 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (90250505)
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研究分担者 |
清水 裕 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 技術専門職員 (00374629)
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10443920)
原 彰彦 北海道大学, -, 名誉教授 (40091483)
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キーワード | 食物アレルギー / 魚卵 / アレルゲン / β'-コンポーネント |
研究概要 |
【内容】 広範な魚種を認識できる魚卵検知系の確立には,各種の魚卵に含まれる主要アレルゲン(β'-c)を,魚種に依存することなく認識する複数種の抗体(共通抗体)を調製する必要がある。昨年度は、魚種間共通性の高いIgEエピトープ部位を認識するペプチド抗体(a-EP1)を作製した。今年度は,シロザケβ'-cのIgEエピトープを参考にした4種のペプチド抗体(a-EP群)と,魚種間においてアミノ酸配列類似性の高い3カ所を認識するペプチド抗体(a-HP群)を調製した。そして,これら7種のペプチド抗体の魚種特異性を、シロザケ、アサバカレイおよびカペリンの卵黄抽出物(β'-cを含む)を抗原としたイムノブロッティング(界面活性剤と還元剤共存下)によって調べた。 【結果】 1.a-EP群は,シロザケβ'-cに対する反応性を有するが、アサバカレイとカペリンのβ'-cとは反応しなかった。一方a-HP群では、β'-c のc末端領域を認識する抗体(a-HP1)が3種のβ'-cに対して明確に反応した。a-HP1のβ'-cに対する反応性は,a-EP1と同様,SDSと2-メルカプトエタノールの共存下でも損なわれなかったので,サンプルの抽出や前処理に界面活性剤や還元剤の使用が可能である。以上の結果から,平成24年度に獲得できたa-EP1に加えて,目的とする魚卵検知系の確立に必要な2種類の抗体が得られたと判断した。 2.複数魚種のβ'-cと反応するa-EP1とa-HP1は,ともにシロザケβ'-cのC末端側(構成アミノ酸170残基中,N末端より130~150番目の範囲)を認識する。一方,シロザケβ'-cのみに反応したペプチド抗体群の認識部位はN末端25~110とから中央部に集中していた。認識部位の位置によって、その抗体の魚種特異性が明確に異なることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果1で述べたように,広範な魚種を認識できる魚卵検知系の確立に必要な2種類のペプチド抗体を調製することができた。これにより,検知系の確立に進むことが可能となった。また,本研究の過程で,「認識するペプチド部位がβ'-c中に存在するにもかかわらず,その反応性が認められなかったペプチド抗体」が存在した。この事実は,β'-cの構造変化とアレルゲン性の関係を議論する際の重要な情報となりうるもので,新しい視点からのアレルゲン研究の展開に結びつく可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
1.H24-H25年度で調製した2種のペプチド抗体(a-EP1、a-HP1)を用いた検知系構築を進める。 2.認識するペプチド部位がβ'-c中に存在するにもかかわらず,その反応性が認められなかったペプチド抗体については,限定消化したβ'-cに対する反応性を調査し,検知定量系への活用可能性を調べる。 3.今年度に調製したペプチド抗体が結合できなかった配列部分では,抗原であるβ'-cの構造に起因する結合阻害が起きているかもしれない。これらの抗体認識部位についての情報と魚種特異性に関連する知見は、今回の抗体作製だけでなく、魚種間交差性に関与するIgEエピトープを解明する際の有益な情報となりうるもので,今後の魚卵アレルゲンの解析研究に反映させていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に購入した各種物品の支払いにあてる。 1)上記の通り,年度末に購入した各種物品の支払いにあてる。 2)65,802円については平成26年度の消耗品購入にあてる。
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