研究課題/領域番号 |
24580296
|
研究機関 | 東北生活文化大学短期大学部 |
研究代表者 |
永沼 孝子 東北生活文化大学短期大学部, その他部局等, 講師 (50250733)
|
研究分担者 |
小川 智久 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (80240901)
村本 光二 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90157800)
|
キーワード | レクチン / 微生物 / 生体防御 / LPS / 生殖腺 / 未成熟卵 |
研究概要 |
これまでに、マベガイ外套膜および体液に含まれるレクチンについて、マンノースをリガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーによる2段階の精製を行うことで、9個のレクチン画分を得ることができた。これらについてマベガイの卵成熟に関与する機能を追究する課程で、いくつかの画分が、本来の目的とは異なるが、微生物に対して特異的に強い凝集能を有することが明らかになった。そこで、このうち特に反応が明確な2画分(P-1, P-2とする)について、レクチン本来の基本的機能である生体防御機能に視点を置き、微生物(細菌)との相互作用について精査した。 2つのレクチンはいずれも植物由来レクチンであるジャッカリンと相同性を有し、SDS-PAGEの結果より二量体で存在していることが確認された。また、トレハロース、マンノース、、メチル-D-マンノピラノシドに強い結合特性を示すことが明らかになった。 マンノースに結合特性性を示した事実に基づいて、各種細菌との相互作用について検討した。保有するLPSの明らかになっているグラム陰性菌に対しては、両者とも主にSタイプ(野生型)を認識したが、注目すべき点はP-2がRdタイプの変異株も強く凝集することであった。さらに、各種LPSとの反応について検討した結果、細菌における結果同様、SタイプとRdタイプのLPSを凝集することが分かった。P-2がRd変異株を認識する機構は、RdタイプLPSの最も外側に位置する糖がヘプトース(基本骨格はマンノース)であることに起因すると思われた。また、これらのレクチンは相互作用を示すグラム陰性菌の一部に対して静菌作用を有していたが、抗菌能は見られなかった。 これらのレクチンはタキレクチンのようにマベガイの体液中で協調して働き、固体の生体防御に貢献している可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来、マベガイの生殖機能とレクチンとの関係を精査する目的であったが、新たに精製したレクチン画分の複数に微生物との明確な相互作用が確認され、またこれらの各分が量的に比較的多く得られたことから、レクチンの生体防御作用についての検討を行うことを先行した。そのため、未受精卵の成熟調節機能に関すると考えられるレクチン(PPL-1)についての検討がやや遅れている。 PPL-1については試料を蓄積するために精製を行い、作成した抗体についても確認しているところであるが、PPL-1は精製による収量が少ないため、試験を進めるのに十分な量を得るために時間がかかっている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、試料であるレクチンPPL-1を充分量精製する。これを用いて次のことを検討する。 ①In situハイブリダイゼーションを行ってマベガイ各組織におけるPPL-1の局在を調べる。 ②さらに同様の組織におけるRNAの発現を確認してPPL-1の発現・局在を明らかにする。③マベガイ生体内における未受精卵の成熟過程でPPL-1発現の経時的変化を追う。この結果からPPL-1が卵成熟のどの過程で機能するのかを推測する。④PPL-1発現不全の固体を作作出し、③の結果より、卵の成熟調節と強く関与すると考えられるステージの卵の様子を形態学的に観察する。 複数の新規レクチンについては、各種微生物および病原性微生物との相互作用を広く観察して、微生物との反応特異性を明らかにする他、これらのレクチンについても生殖機能との関与があるかどうか、In situ ハイブリダイゼーションを行って観察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度、レクチン(PPL-1)の生理機能について精査する予定で抗体作成費、免疫組織化学用の試薬と技術指導に関わる謝金、遺伝子解析のための機械使用料および試薬類を見込んでいたが、サンプルの量が不足したために、当該実験が予定通り進まなかった。一方で別のレクチン(P-1,P-2)の精製が進み、サンプル量も比較的多かったためにこれらに関する検討を先行して行った。この検討に関しては多くの試験において既存の機械・器具を使用することができたことと、高額な試薬を使用しなかったことから当該使用額が生じた。 H26年度においては、これまで進めてきたP-1およびP-2の生理機能の追究を進めるが、これに関しては試薬とディスポーザブル器具を中心に30万円ほどの経費を見込んでいる。一方、当初目的のPPL-1の生理機能の検討については、上記理由にあるような試薬・人件費が必要になると思われる。これについては60万円程を充てる計画である。また、当初の計画には組み入れていないが、分光光度計が必要になったため、購入費用として70万円程を物品費から備品費に転用する予定である。 研究成果の報告(学会発表、論文発表)に必要な経費を20万円ほど計上する。
|