研究実績の概要 |
これまでに単離したマベガイ外套膜レクチンのうち、生理機能については次の3つに大別されることが示唆されている。1. 雌性生殖腺の成熟に関与する。2. カルシウムの結晶化(真珠形成)に関与する。3. 生体防御(微生物の凝集)に関与する。 2, 3, の機能をもつものについては得られた8種のレクチンの一次構造に類似性が見られており、植物レクチンの一種と相同性が確認された。今年度は精製によって単離された8種のレクチンのうち2つについて、抗体を作成して局在をし調べるとともに、各種微生物に対する凝集能を精査した。抗体を用いた検討では、外套膜、生殖線に局在が認められた。また、微生物の凝集能は、複数のグラム陰性菌に対して凝集・静菌能は認められるものの、殺菌能までは見られなかった。8種のうち3種(これらは一次配列が非常に類似していた)にはカルシウム結晶化に関する作用が認められたが、そのうち1種はカルシウムの結晶におけるマトリックスとして機能し、他の2種は結晶化現象をコントロールする機能を有していた。結晶の質(即ち真珠の光沢)は、結晶化のコントロールの際に、2つのレクチンの存在比によって決まるものと推測され、レクチン比がほぼ同程度の場合に結晶の質が高いものができると考えられた。精製された8種のレクチンのうち、前述以外で最も多量に得られたものが2種あるが、これらは予想される生理機能はほぼ全く有していなかった。また抗体の作成においても特異性の高いものが得られなかったため、局在の確認ができなかった。しかし、多量に存在するという事実から、明らかな生理機能をもつものではなく、存在量に意味があるのではないかとも考えられる。 1.の機能については、魚卵レクチンと相同性を有するものが単離され、雌性生殖腺に存在することが明らかになった。このレクチンは、他の8種のレクチンとは一次構造が全く異なっていた。
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