研究課題
基盤研究(C)
血液中のリポタンパク質をアクリルアミドゲル電気泳動などで分画し,ゲル中の脂質全般[主にコレステロールエステル(CE)およびトリアシルグリセロール(TAG)]を染色した過去の報告では,トラフグは,血液中の主要なTAG運搬体である低密度リポタンパク質(LDL)含量が低いために筋肉に脂質を蓄積しないとされてきた。本研究では,まずこの仮説を検証するため,血液中のリポタンパク質をカラムで分画し,それぞれの画分ごとにTAG量を測定する実験系を確立した。トラフグおよびマダイの血液につき本分析を行ったところ,LDL量およびそれに含まれるTAG量に顕著な違いは認められなかった。また,血液中の総TAG量にも大きな差はなかった。一方,同一の試料をblue native PAGEに供し,ゲルの中の総脂質を染色したところ,既報と同様にトラフグでLDL画分の含量が低かった。以上の結果は,1) 電気泳動実験においてTAGと考えられてきた成分は主にCEであること,2) トラフグはLDL中のCE含量がマダイよりも低いこと,3) トラフグ血液のTAG量およびTAGのリポタンパク質における分布はマダイとほぼ同じであることを示唆する。したがって,血液成分の違いはトラフグ筋肉のTAG含量が低い理由としては妥当性が低く,筋肉へのTAGの取り込みの段階で魚種間の違いが生じていることが予想された。本研究では,TAGの臓器間輸送を制御する因子として成長ホルモン(GH)を想定している。そこで,トラフグ肝臓切片を大腸菌で作製した組み換えトラフグGHで処理し,その後の遺伝子発現をマイクロアレイおよびリアルタイムPCRで経時的に調べた。その結果,GHで制御されると考えられる脂質代謝遺伝子が数多く同定された。今後は,両魚種のLPL発現制御について検討を進めるとともに,リポタンパク質中のapo-14の分布を調べる予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
血液成分の分析がほぼ予定通り完了したとともに,遺伝子発現解析が当初計画よりも進んでいる。
計画書に沿って進める。とくに,GHによる脂質代謝関連遺伝子の発現制御機構の解明に焦点をあてる。
遺伝子発現解析に用いる消耗品が主な用途となる。
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Fisheries Science
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General and Comparative Endocrinology
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Aquaculture Research
巻: in press ページ: in press